概要
タロット大アルカナの5番。伝統・教義・制度化された信仰を表すとされるカード。
図像の変遷
ヴィスコンティ・スフォルツァ版の法王は、三重冠と法衣をまとい、随伴者を伴わずに単独で玉座に座る姿で描かれる。マルセイユ版では、法王が二本の柱の間に座り、祝福の仕草を取りながら三重十字の杖を持つという構図が定型化した。ライダー・ウェイト版でウェイトとスミスは、呼称を「法王」からギリシャ語由来の「ハイロファント(秘儀を示す者)」に改め、足元に跪く二人の剃髪した修道士を新たに描き加えることで、特定の教会的権威から離れた、より普遍的な伝統の伝達者という性格を強めた。
語源
英語 hierophant はギリシャ語 ἱεροφάντης(「聖なるものを示す者」)に由来する、20世紀以降に定着した呼称。初期のイタリアのデッキでは単に「法王(Il Papa)」と呼ばれた。
歴史
初期のイタリアのデッキから、女教皇と対をなす教会権威の図像として存在した。実在のローマ教皇を直接描いたものではなく、宗教的権威一般を表す図像とされる。
各伝統における意味
初期のタロット
法王・女教皇のペアは、皇帝・皇后のペアと並んで「霊的権威」を表す組として構成されていたとする説がある。
ゴールデン・ドーン以降のオカルト的解釈
ヘブライ文字の伝統的分類(『形成の書』の「3母字・7複字・12単字」)では、教皇の配当パスであるヴァヴ(ו)は「単字」に属し、黄道十二宮のうち牡牛座(牡牛座)に配当される。
関連ノード
生命の木から見た整理(任意)
本項は本プロジェクト独自の整理モデルであり、歴史的事実の記述ではない。黄金の夜明け団の対応表では22パスのうちヴァヴ(ו)のパス(path-vav)に配当されるとされる。
参考文献
- Michael Dummett, The Game of Tarot: From Ferrara to Salt Lake City, Duckworth, 1980. — タロットが15世紀イタリアのトリックテイキングゲームとして始まったことを実証した基礎的な歴史研究
- Ronald Decker, Thierry Depaulis, Michael Dummett, A Wicked Pack of Cards: The Origins of the Occult Tarot, St. Martin’s Press, 1996. — 18世紀末以降のオカルト的再解釈(クール・ド・ジェブラン、エッティラ、レヴィ、黄金の夜明け団)の経緯を扱う
- Arthur Edward Waite, The Pictorial Key to the Tarot, William Rider & Son, 1910. — ウェイト版タロットの意味づけの一次資料
- Israel Regardie, The Golden Dawn: A Complete Course in Practical Ceremonial Magic, 6th ed., Llewellyn Publications, 1989(初版1937-1940). — 黄金の夜明け団内部の対応表の一次資料