概要
ピエール・ミオット(Pierre Miotte、ラテン語表記 Petrus Miotte Burgundus、ブルゴーニュ出身を意味する)は、17世紀に活動したフランス出身の銅版画家。ローマで活動し、イエズス会士アタナシウス・キルヒャー(アタナシウス・キルヒャー)の大著『大いなる光と影の術』(Ars Magna Lucis et Umbrae、1646年)の口絵を手がけたことで知られる。生没年など詳しい経歴は判明していない。
歴史
ミオットが手がけたキルヒャー『大いなる光と影の術』の口絵は、摂理の目(プロビデンスの目)から発する光が、諸惑星・天使・レンズや鏡などの光学器具といった宇宙の諸階層を貫いて地上の影に至るまでを一枚の寓意図として構成した精緻な銅版画で、太陽と月を擬人化したアポロとディアナの像も配されている。同じ時期には、月の満ち欠け28相を示す天文図の銅版画も手がけており、いずれもローマの学術出版に関わる版画家として活動していたことがうかがえる。
各伝統における意味
ヘルメス思想・自然哲学
キルヒャーの著作群は、光学という当時の自然科学と、大宇宙・小宇宙の照応というヘルメス思想的な世界観を同一の図像の中に共存させようとする点に特徴があり、ミオットの口絵はその視覚的な要約として機能している。「大宇宙(天上界)の光が小宇宙(地上界)の影を生む」という構図そのものが、単なる装飾ではなく、キルヒャーの思想体系を凝縮した図像だと評されている。
参考文献
- Paula Findlen (ed.), Athanasius Kircher: The Last Man Who Knew Everything, Routledge, 2004. — キルヒャーの著作と図像戦略を多角的に扱う代表的研究論集
- Joscelyn Godwin, Athanasius Kircher’s Theatre of the World, Thames & Hudson, 2009. — キルヒャー著作の銅版画群を主題とした図像研究で、『大いなる光と影の術』口絵についても詳述