概要
ナルシシズムは、精神分析における自己愛を表す概念。ジークムント・フロイト(ジークムント・フロイト)が理論的に体系化し、ギリシャ神話のナルキッソス(ナルキッソスとエコー)に由来する命名で広く知られるようになった。
語源
神話のナルキッソスの名から、19世紀末の精神医学文献で既に比喩的に用いられていたが、フロイトが1914年の論文「ナルシシズム入門」で理論的な精緻化を行った。
歴史
フロイトは、乳幼児期に自己自身に向けられるリビドー(性的エネルギー)の備給(一次ナルシシズム)と、対象への愛が何らかの理由で自己へと引き戻された状態(二次ナルシシズム)を区別して論じた。
各伝統における意味
精神分析理論における位置づけ
自己愛は発達過程における正常な段階である一方、過度に固着した場合は病理的な自己愛(現代の診断基準における「自己愛性パーソナリティ障害」)として理解される。
神話の再解釈としての性格
この用語は、神話本来の教訓譚的な文脈(自惚れへの戒め)から離れ、フロイトの発達理論・リビドー論の枠組みの中で新たに定義し直されたものである点に注意が必要である。
現代文化
「ナルシスト」という語は、日常語として自己中心的な人物を指す一般的な表現として広く定着している。
関連ノード
- ジークムント・フロイト — 理論的に体系化した人物
- ナルキッソスとエコー — 命名の由来となった神話
参考文献
- Peter Gay, Freud: A Life for Our Time, W.W. Norton, 1988. — フロイト研究の標準的学術的伝記
- Sigmund Freud, “On Narcissism: An Introduction” (1914), in Standard Edition, Vol. 14, Hogarth Press, 1957. — ナルシシズム理論の一次資料