概要
ナルキッソスとエコーは、水面に映る自分の姿に恋をして命を落とした美青年ナルキッソスと、彼に叶わぬ恋をしたニンフ・エコーの悲恋を描くギリシャ神話。
語源
「ナルキッソス(Νάρκισσος)」の名は、感覚の麻痺を意味するギリシャ語 νάρκη(ナルケー)と関連づけられることがある。水仙の学名 Narcissus はこの神話に由来する。
歴史
オウィディウス『変身物語』(『変身物語』、紀元後1世紀頃)が、この物語の最も詳細で後世に大きな影響を与えた伝承源とされる。
各伝統における意味
ギリシャ神話における記述
美貌の青年ナルキッソスは、多くの求婚者を退け続けたため、声だけを繰り返すことしかできない呪いを受けたニンフのエコーの恋も拒絶した。この報いとして、ナルキッソスは水面に映る自分自身の姿に恋をするよう仕向けられ、その姿から離れることができずに衰弱死し、水仙の花に変じたとされる。エコーもまた、報われぬ恋に衰弱し、声だけの存在となって山にこだまし続けるとされる。
教訓譚としての読解
伝統的に、自惚れ・自己愛への戒めとして読まれる。
美術
カラヴァッジョの『ナルキッソス』をはじめ、西洋美術で繰り返し描かれた主題。個別作品は今後ノード化する。
文学
オウィディウス『変身物語』が主要な古典文献。
心理学
20世紀初頭、精神分析において、この神話から「ナルシシズム」(ナルシシズム)という概念が着想された。これは神話本来の教訓譚としての読み方とは異なる、心理学的な再解釈である点に注意する必要がある。
現代文化
「エコー」の語は、音の反響現象を指す一般語として広く定着している。
関連ノード
参考文献
- Timothy Gantz, Early Greek Myth: A Guide to Literary and Artistic Sources, Johns Hopkins University Press, 1993. — 各神話の異伝を古典文献に即して整理した標準的資料集
- Ovid, Metamorphoses, trans. A.D. Melville, Oxford University Press, 1986(原典 紀元前後). — ナルキッソスとエコーの神話を伝える代表的な古典文学作品