概要
アメジストは、紫色の石英。西洋の宝石誌学では代表的に土星(土星)に対応づけられ、その語源自体がギリシャ神話の酩酊防止の俗信に由来するという、宝石誌の中でも特異な成立史を持つ。
語源
「アメジスト(Amethyst)」はギリシャ語 ἀμέθυστος(アメトゥストス、「酔わない」の意、否定の接頭辞 ἀ- + methyein「酔う」)に由来する。この石を身につける、あるいは酒杯に加工すると酩酊を防ぐという古代の俗信が、そのまま名称の由来となった。
歴史
オウィディウスに帰される伝承(後代の付加とする説もある)では、酒神ディオニュソス(ディオニュソス)に追われたニンフのアメトゥストスが、女神アルテミスによって石に変えられて難を逃れ、それを見たディオニュソスが悔いて葡萄酒を石に注いだために紫色になったとされる。
各伝統における意味
占星術的宝石学
代表的には土星に対応づけられ、その紫色から節制・冷静さ・霊性を象徴するとされた。土星の「抑制・禁欲」的性質は、この石の「酩酊を防ぐ」という伝統的属性と親和的に結び付けられたと考えられる。
護符としての用法
中世〜近世を通じて、酩酊防止・冷静な判断力をもたらす護符として、指輪や杯の装飾に用いられた。
キリスト教における位置づけ
司教の指輪にも好んで用いられ、聖職者の節制・霊的清廉さの象徴とされた。
関連ノード
参考文献
- Heinrich Cornelius Agrippa, Three Books of Occult Philosophy, trans. James Freake, ed. Donald Tyson, Llewellyn Publications, 1993(原典1533年). — 占星術的宝石対応表の代表的一次資料
- Joan Evans, Magical Jewels of the Middle Ages and the Renaissance, Clarendon Press, 1922. — 中世〜ルネサンス期の宝石誌学史を扱う古典的学術研究
- Timothy Gantz, Early Greek Myth: A Guide to Literary and Artistic Sources, Johns Hopkins University Press, 1993. — アメジスト語源神話を含む異伝を古典文献に即して整理した標準的資料集