概要
ブラッドストーン(血石、別名ヘリオトロープ)は、緑色の石英質の石に赤い斑点が散った外観を特徴とする石。西洋の宝石誌学では火星(火星)に対応づけられ、その赤い斑点が「血」を連想させることから、止血・武運の護符として用いられた。
語源
「ヘリオトロープ(Heliotrope)」はギリシャ語「太陽(ヘリオス)」+「向く(トロペー)」の合成語で、水に浸すと太陽の色を映すとされた古代の俗信に由来する。「ブラッドストーン」は赤い斑点を血に見立てた近世以降の通称。
歴史
中世ヨーロッパのラピダリー文献では、この石にキリストの磔刑にまつわる伝説が付与された。イエスの血が十字架の下の緑の石(ヘリオトロープ)に滴り落ち、その痕跡が赤い斑点として残ったとする中世の伝承である。この伝承により、ブラッドストーンは他の護符的な石とは一線を画す、キリスト教的な聖性を帯びた石として特別視された。
各伝統における意味
占星術的宝石学
火星が司る血・戦・活力との対応から、止血・武運長久の護符として身につけられた。赤い斑点という石そのものの外見的特徴が、火星=血という理論的対応の直接の根拠とされた。
キリスト教的伝承
キリストの血にまつわる中世の伝承により、聖遺物に準じるような特別な聖性を帯びた石として扱われることもあった。この伝承は歴史的事実ではなく、後世に付与された宗教的物語である点に注意が必要。
関連ノード
参考文献
- Joan Evans, Magical Jewels of the Middle Ages and the Renaissance, Clarendon Press, 1922. — キリストの血の伝説を含む中世〜ルネサンス期の宝石誌学史を扱う古典的学術研究
- Christopher Duffin, R.T.J. Moody, Christopher Gardner-Thorpe (eds.), A History of Geology and Medicine, Geological Society, 2013. — 宝石の薬効・護符伝統の学術的概説