概要
カモミール(ジャーマンカモミール、学名 Matricaria chamomilla)は、キク科の一年草。西洋薬草学では太陽(太陽)に支配される植物とされ、古代から現代に至るまで、熱や不調全般を癒やす代表的な薬草として広く親しまれてきた。
語源
「カモミール」はギリシャ語 χαμαίμηλον(カマイメーロン)に由来し、「地面(khamai)」と「リンゴ(mēlon)」の合成語とされる。地を這うように低く育つ性質と、リンゴに似た芳香を持つことにちなむ命名という。
歴史
古代エジプトでは太陽神ラーに捧げられた植物であったとする伝承が、現代の薬草誌・民俗誌に広く繰り返されている。ただし、この伝承を裏づける一次史料(ヒエログリフ碑文等)の具体的な出典は、通俗的な文献の間でも明確に示されないことが多く、後世の脚色を含んでいる可能性がある点には注意が必要である。より確実な史料として、9〜10世紀頃の古英語の呪文集『ラクヌンガ』に収められた「九種の薬草の呪文(Nine Herbs Charm)」には、カモミールと同定される「マイゼン(mægðe)」が、聖なる力を持つ九つの薬草の一つとして挙げられている。ニコラス・カルペパー『イングリッシュ・フィジシャン』(1653年)は、カモミールを太陽支配の植物とし、解熱剤としての効能を説いた。
各伝統における意味
占星術的薬草学
太陽が司る生命力・熱との対応から、解熱・活力回復のための代表的な植物とされた。黄金色の花芯を太陽の色に見立てる図像的な連想も、この対応関係を補強したと考えられる。
古代エジプトの聖なる薬草としての伝承
太陽神ラーへの捧げ物であったとする伝承(史料的な裏づけには限界がある)は、この植物と「太陽」との結び付きが、西洋占星術的薬草学の体系が確立する遥か以前から、地中海世界の文化的背景として存在していたことを示唆する。
現代文化
現代でも、安眠・鎮静効果を持つハーブティーとして世界的に親しまれている。
関連ノード
参考文献
- Nicholas Culpeper, Culpeper’s Complete Herbal, 1653(近年版: Wordsworth Editions, 1995). — 占星術的薬草学における惑星対応の一次資料
- Lacnunga(写本、大英図書館蔵 Harley MS 585), “Nine Herbs Charm.” — 古英語の薬草呪文集
- Margaret Baker, Discovering the Folklore of Plants, 3rd ed., Shire Publications, 2001. — 西洋の植物民俗誌の標準的概説書