概要
エルダー(ニワトコ、学名 Sambucus)は、西洋薬草学において金星(金星)に支配される木とされる。中世〜近世ヨーロッパの民間伝承では、木の中に「エルダーマザー」と呼ばれる精霊が宿るとされ、伐採や加工の際には許しを請う儀礼的な作法が広く見られた。
語源
英語 elder は古英語 ellærn に遡るとされる。
歴史
ニコラス・カルペパー『イングリッシュ・フィジシャン』(1653年)は、エルダーを多岐にわたる効能を持つ薬草として詳述し、金星支配の植物に位置づけた。中世〜近世の北欧・ゲルマン系の民間伝承では、木を守護する精霊「エルダーマザー(Hylde-Moer)」への信仰が広く見られ、木を傷つける前にはお伺いを立てる作法が各地に伝わっていた。
各伝統における意味
占星術的薬草学
金星が司る調和・美・愛情との対応から、皮膚の美容・炎症の緩和に効くとされた。
エルダーマザー伝承と護符としての用法
エルダーの木は家の敷地に植えると邪悪なものを寄せ付けないとされる一方、木そのものに宿る精霊を怒らせると災いがあるとする、両義的な畏怖の対象として扱われた。十字架がエルダーの木で作られたとする(史実性の裏付けのない)中世の伝承も広く流布し、木への畏怖をさらに強めたとされる。
関連ノード
参考文献
- Nicholas Culpeper, Culpeper’s Complete Herbal, 1653(近年版: Wordsworth Editions, 1995). — 占星術的薬草学における惑星対応の一次資料
- Margaret Baker, Discovering the Folklore of Plants, 3rd ed., Shire Publications, 2001. — エルダーマザー伝承を含む西洋の植物民俗誌の標準的概説書