概要
柳(学名 Salix)は、西洋薬草学において月(月)に支配される木とされる。水辺を好み、しなやかに枝垂れる性質から、月の水性・柔軟性との対応で理論化された。西洋文学・聖書伝統において「悲しみ」「喪失」の象徴として繰り返し登場する木でもある。
語源
英語 willow は古英語 welig に遡る、ゲルマン語派に共通する語。
歴史
ニコラス・カルペパー『イングリッシュ・フィジシャン』(1653年)は柳を月支配の木として位置づけ、その冷性・湿性から解熱・鎮静の効能を説いた。柳の樹皮に含まれるサリシン(アスピリンの先駆物質)は、後の近代薬理学によって実際に解熱鎮痛作用が確認されている。
各伝統における意味
占星術的薬草学
月の冷性・湿性との対応から、解熱・鎮静・出血を抑える効能があるとされた。
聖書・文学における悲しみの象徴
旧約聖書詩篇137篇「バビロンの流れのほとりで」では、捕囚のユダヤ人が竪琴を柳の木に掛けて泣いたと歌われ、これが西洋文学における柳と悲嘆の結び付きの最古級の典拠の一つとされる。シェイクスピア『ハムレット』のオフィーリアが身を投げる場面でも柳の木が印象的に描かれるなど、この結び付きは後世の西洋文学に繰り返し受け継がれた。
文学
「柳の下で嘆く」という慣用的な情景は、西洋文学における悲嘆・喪失の代表的な図像的定型として広く用いられてきた。
関連ノード
参考文献
- Nicholas Culpeper, Culpeper’s Complete Herbal, 1653(近年版: Wordsworth Editions, 1995). — 占星術的薬草学における惑星対応の一次資料
- Margaret Baker, Discovering the Folklore of Plants, 3rd ed., Shire Publications, 2001. — 西洋の植物民俗誌の標準的概説書