概要
フリードリヒ・ニーチェ(Friedrich Nietzsche、1844年-1900年)は、ドイツの哲学者。処女作『悲劇の誕生』(1872年)で提示した「アポロン的/ディオニュソス的」という対比概念は、ギリシャ神話上のアポロン(アポロン)とディオニュソス(ディオニュソス)を、近代美学・哲学の分析概念として転用した代表的事例として知られる。
歴史
古典文献学者としてバーゼル大学の教授を務めていた20代の若さで『悲劇の誕生(Die Geburt der Tragödie)』を著した。本作は当初、専門的な古典文献学界からは方法論的に厳密さを欠くとして冷淡に受け止められたが、後に美学・哲学の古典として広く再評価されるに至った。
各伝統における意味
「アポロン的/ディオニュソス的」対比
アポロンが体現する秩序・理性・個体化の原理と、ディオニュソスが体現する陶酔・混沌・根源的一体感の原理を対比させ、古代ギリシャ悲劇はこの2つの原理の緊張関係から生まれたと論じた。
古代ギリシャ神話との関係
この対比構造は、ニーチェ自身の哲学的枠組みによる近代の再解釈であり、古代ギリシャ人自身がアポロンとディオニュソスをこのような対比構造で捉えていたことを示す直接の史料的根拠はない。神話上の神格そのものの記述と、後代の哲学的援用は明確に区別する必要がある。
哲学
「アポロン的/ディオニュソス的」という語彙は、ニーチェ以後の美学・芸術批評において、秩序と混沌、理性と情動という対概念を表す一般的な分析枠組みとして広く定着した。
関連ノード
参考文献
- Friedrich Nietzsche, The Birth of Tragedy, trans. Douglas Smith, Oxford University Press, 2000(原著1872年). — 「アポロン的/ディオニュソス的」対比を提唱した一次資料
- M.S. Silk, J.P. Stern, Nietzsche on Tragedy, Cambridge University Press, 1981. — 本作の思想史的位置づけを扱う標準的学術研究