概要
ノアは、『創世記』6〜9章に登場する人物。神が人類の悪を裁いて大洪水を起こす際、「同時代の中で唯一正しい人」として選ばれ、方舟(ノアの方舟)を作って家族と動物を救ったとされる。
語源
ヘブライ語 נֹחַ(ノアハ)は「安らぎ・慰め」を意味する語根と関連づけられる(創世記5章29節の語源説明)。
歴史
大洪水物語自体は、古代メソポタミアの『ギルガメシュ叙事詩』(ウトナピシュティムの洪水譚)や、それ以前のシュメールの洪水神話など、複数の古代近東の洪水伝承と類似の構造を持つことが比較文献学によって指摘されている。旧約聖書の洪水物語は、これらの地域的伝承の類型を、ヤハウェ信仰の神学的枠組みで再構成したものと位置づけられる。
各伝統における意味
ユダヤ教・キリスト教内部の教説
洪水後、神はノアと「二度と全ての生き物を洪水で滅ぼさない」という契約を結び、その徴として虹を立てたとされる(創世記9章)。この「ノアの契約」は、後のアブラハムとの契約に先立つ、人類全体を対象とした最初の契約として位置づけられる。
関連ノード
参考文献
- James L. Kugel, The Bible As It Was, Harvard University Press, 1997. — 聖書物語の古代における解釈史を扱う学術研究
- Andrew George (trans.), The Epic of Gilgamesh, Penguin Classics, 1999. — 比較対象となるメソポタミアの洪水神話の標準訳