概要
タロット大アルカナの3番。豊穣・母性・自然の実りを表すとされるカード。
図像の変遷
ヴィスコンティ・スフォルツァ版でもマルセイユ版でも、女帝は鷲の紋章を掲げた盾と笏を持ち、玉座に腰掛ける政治的権威の象徴として描かれ、両者の構図はおおむね共通した簡潔で形式的な表現にとどまる。ライダー・ウェイト版でパメラ・コールマン・スミスは、盾の紋章を鷲から金星記号に置き換え、麦畑や川の流れる豊かな自然の中に女性を座らせ、ザクロ模様の衣や星の冠を加えることで、世俗の統治者から豊穣と母性を体現する存在へと図像の重心を移した。
歴史
初期のイタリアのデッキから、皇帝と対をなす女性権力者の図像として存在した。
各伝統における意味
初期のタロット
皇帝・皇后(女帝)のペアは、法王・女教皇のペアと並んで世俗権力を表す組として構成されていたとする説がある。
ゴールデン・ドーン以降のオカルト的解釈
ヘブライ文字の伝統的分類(『形成の書』における「3母字・7複字・12単字」の体系)では、女帝の配当パスであるダレット(ד)は「複字」に属し、伝統的7惑星のうち金星(金星)に配当される。豊穣・美という金星の性質が女帝のイメージと結び付けられたとされる。生命の木の第7セフィラ「ネツァク」も金星に配当されるが(ネツァク)、これは別系統の対応表(セフィラ↔惑星)であり、ダレットのパス↔金星の対応(パス↔惑星)とは出典を異にする点に注意する。
関連ノード
- path-daleth — 生命の木における配当パス
- 金星 — ヘブライ文字の伝統的分類における配当惑星
生命の木から見た整理(任意)
本項は本プロジェクト独自の整理モデルであり、歴史的事実の記述ではない。黄金の夜明け団の対応表では22パスのうちダレット(ד)のパス(path-daleth)に配当されるとされる。
参考文献
- Michael Dummett, The Game of Tarot: From Ferrara to Salt Lake City, Duckworth, 1980. — タロットが15世紀イタリアのトリックテイキングゲームとして始まったことを実証した基礎的な歴史研究
- Ronald Decker, Thierry Depaulis, Michael Dummett, A Wicked Pack of Cards: The Origins of the Occult Tarot, St. Martin’s Press, 1996. — 18世紀末以降のオカルト的再解釈(クール・ド・ジェブラン、エッティラ、レヴィ、黄金の夜明け団)の経緯を扱う
- Arthur Edward Waite, The Pictorial Key to the Tarot, William Rider & Son, 1910. — ウェイト版タロットの意味づけの一次資料
- Israel Regardie, The Golden Dawn: A Complete Course in Practical Ceremonial Magic, 6th ed., Llewellyn Publications, 1989(初版1937-1940). — 黄金の夜明け団内部の対応表の一次資料