概要
『テュイルリーの赤い男(L’Homme rouge des Tuileries)』は、ポール・クリスチャン(ポール・クリスチャン)が1863年に発表した著作。カトリーヌ・ド・メディシスに仕えたイタリア人占星術師コジモ・リュジエリにまつわる伝説を題材に、テュイルリー宮殿に代々出現し、フランス王家に大きな凶事が迫ると姿を現すとされる「赤い男」の怪異譚を文学的に脚色した作品。
語源
原題 L’Homme rouge des Tuileries は「テュイルリー宮殿の赤い男」の意。「テュイルリー(Tuileries)」はパリのテュイルリー宮殿に、「赤い男」は伝説上の亡霊・幻視の姿に由来する。
歴史
「テュイルリー宮殿に現れる赤い男」の伝説自体は、カトリーヌ・ド・メディシスに仕えたイタリア人占星術師・魔術師コジモ・リュジエリ(Cosimo Ruggieri)にまつわる同時代からの風聞や、後世の文学的脚色(オノレ・ド・バルザックによる『カトリーヌ・ド・メディシスをめぐって』などを含む)を通じて19世紀フランスで広く流布していた。クリスチャンは1863年に、この伝説を独自の物語としてまとめ、1冊の著作として発表した。伝説では、この幻影はアンリ4世暗殺の前夜やナポレオンの没落前など、フランス史上の重大な転換点の直前に姿を現したとされる。
各伝統における意味
王権と予兆をめぐる民間伝承
「赤い男」の出現は、フランス王家・国家に迫る破局を予告する凶兆として位置づけられており、占星術師・魔術師(リュジエリ)を介して王権と超自然的な力とを結びつける、近世フランスの宮廷魔術師伝説の系譜に連なるモチーフである。
文学的脚色としての性格
この物語は歴史的事実の記録ではなく、19世紀のフランスで人気を博した怪異文学・大衆的歴史読み物というジャンルに属する。クリスチャン自身が他の著作(『魔術の歴史』)でも、史実と伝説的脚色を明確に区別せずに提示する傾向があり、本作もその延長線上にある創作性の強い作品として扱う必要がある。
文学
クリスチャンの代表作の一つであり、同時代の他の著述家(バルザックなど)によるリュジエリ・カトリーヌ・ド・メディシスを題材とした文学作品群と並んで、19世紀フランスにおける「宮廷魔術師の伝説」というジャンルを形成する作品の一つ。
関連ノード
- ポール・クリスチャン — 著者
参考文献
- Paul Christian (Jean-Baptiste Pitois), L’Homme rouge des Tuileries, 1863. — 一次資料