概要
『雅歌』(ソロモンの雅歌)は、旧約聖書に収められる恋愛詩集。男女の情熱的な恋愛・肉体的な愛を率直に歌う内容が、聖書正典中でも独特の位置を占める。
語源
ヘブライ語原題 שִׁיר הַשִּׁירִים(シール・ハシリーム、「歌の中の歌」の意)は最上級表現で、「最も優れた歌」を意味する。
歴史
伝統的にソロモン王(ソロモン王)に著者性が帰されるが、言語学的特徴(後代のアラム語・ペルシャ語からの借用語を含む)から、現代の聖書学では捕囚期以降のより後代の成立を有力視する見解が多い。神への言及が全く含まれない点も、正典としての受容過程における議論の対象となった。
各伝統における意味
ユダヤ教における解釈
ラビ・アキバ(2世紀)は本書を「聖書の中の至聖所」と評したと伝えられ、伝統的にはヤハウェとイスラエルの民との愛の関係を寓意的に表す文書として解釈されてきた。
キリスト教における解釈
中世キリスト教では、キリストと教会(あるいは信者の魂)の間の霊的な愛を表す寓意として解釈される伝統が発展した(ベルナルドゥスの説教群が代表的)。
現代の聖書学における読解
現代の聖書学・文学研究では、寓意的解釈から離れ、本文をまず古代近東の恋愛詩の伝統に位置づく、率直な人間の恋愛・情熱を歌った文学作品として文字通りに読む立場が主流になっている。
文学
古代近東の恋愛詩の伝統との比較研究が、20世紀以降の聖書学で進展した。
関連ノード
- ソロモン王 — 伝統的に著者とされる人物
参考文献
- Marvin H. Pope, Song of Songs: A New Translation with Introduction and Commentary, Anchor Bible, Doubleday, 1977. — 雅歌の標準的学術注解
- James L. Kugel, The Bible As It Was, Harvard University Press, 1997. — 聖書物語の古代における解釈史を扱う学術研究