概要
レビス(Rebis、ラテン語 res bina「二重のもの」に由来)は、錬金術における「大いなる業(マグヌム・オプス)」の到達点を表す両性具有の図像。男性(王)と女性(王妃)の両頭を持つ単一の身体として描かれ、対立する性質同士が統合された完全性の象徴とされる。
語源
ラテン語の res bina(二重のもの、二つの物)に由来する造語で、単一の存在でありながら二つの性質を内包することを言葉自体が示している。
歴史
錬金術書の図版に繰り返し現れる主題で、代表的な作例として『薔薇園(ロザリウム・フィロソフォルム)』(Rosarium Philosophorum、16世紀)の一連の木版画が挙げられる。同書では、王と王妃の結婚、死(黒化)、そして再生を経て、両性具有のレビスとして生まれ変わる過程が段階的な図像で示されている。
各伝統における意味
錬金術
物質を腐敗・浄化させ、対立する性質(硫黄と水銀、太陽と月、男性と女性など)を分離した後に再統合するという錬金術の作業工程そのものを人体図で表したものであり、レビスは「賢者の石」(賢者の石)の完成と同一視されることが多い。
心理学
ユング心理学では、対立する心的要素の統合による人格の全体化(自己実現)を象徴するイメージとして、レビスの図像がしばしば引用される。ただしこれは20世紀の心理学的解釈であり、錬金術師自身が同じ意味でこの図像を用いていたという歴史的事実ではない点に留意が必要である。
参考文献
- Lyndy Abraham, A Dictionary of Alchemical Imagery, Cambridge University Press, 1998. — レビス項目を含む錬金術図像の標準的事典
- C. G. Jung, Mysterium Coniunctionis: An Inquiry into the Separation and Synthesis of Psychic Opposites in Alchemy(Collected Works, vol. 14), Princeton University Press, 1963/1970. — レビス図像のユング心理学的解釈の原典