概要
逆行(レトログレード)とは、地球から見て惑星が黄道上を通常とは逆方向(西から東ではなく東から西)に動いているように見える現象。太陽と月を除く伝統的な惑星(水星(水星)・金星・火星・木星・土星)に周期的に起こる。
語源
英語 retrograde はラテン語 retrogradus(「後ろへ進む」)に由来する。
歴史
惑星の逆行は肉眼でも観測可能な現象であり、古代バビロニア・ギリシャの天文学者・占星術師にも早くから知られていた。惑星が円軌道で地球の周りを回っているとする天動説の枠組みでは、この見かけの逆行運動をどう説明するかが理論上の大きな課題となり、周転円(エピサイクル)という補助的な幾何学装置が考案される一因ともなった。
各伝統における意味
天文学的な仕組み
逆行は、惑星が実際に運動方向を反転させているのではなく、地球自身も含めた惑星同士の相対的な公転速度の違いから生じる見かけ上の現象である(地動説の枠組みで説明される)。内惑星(水星・金星)と外惑星(火星以遠)とでは、逆行が生じる幾何学的な条件が異なる。
占星術内部の教説
現代の西洋占星術では、逆行中の惑星は、その惑星が象徴する働きが通常のように外に向かって発揮されず、内省的・停滞的な性質を帯びるとされる。特に水星逆行は、水星が象徴する意思疎通・契約・移動に関する混乱・遅延と結び付けて語られることが多く、大衆的な占星術言説で最も頻繁に言及される逆行現象となっている。これらの意味づけは占星術内部の教説であり、天文学的な現象としての逆行そのものとは別の層に属する。
現代文化
「水星逆行(マーキュリー・レトログレード)」は、現代のポップカルチャーにおいて、通信機器の不具合や誤解・トラブルの原因を占星術的に説明する際の定番の話題として広く定着している。
関連ノード
参考文献
- Nicholas Campion, A History of Western Astrology, Volume I: The Ancient and Classical Worlds, Continuum, 2008. — 古代の逆行観測と周転円理論を扱う学術研究
- Tamsyn Barton, Ancient Astrology, Routledge, 1994. — 古代占星術における逆行の意味づけを扱う学術研究