概要
シトリン(黄水晶)は、黄色〜橙色を帯びた石英。現代の宝石誌・パワーストーン文化では太陽(太陽)に対応づけられ、「商人の石」の異名で富と繁栄を呼び込む護符として扱われる。ただし、古代〜中世においては黄色い石を指す呼称そのものが曖昧で、シトリンという名称と概念が独立して確立したのは比較的新しい時代である点に注意が必要である。
語源
「シトリン(Citrine)」は、ラテン語 citrus(「シトロンの木」)に由来するフランス語 citrin / citron(「レモン色の」)を経て、14世紀の英語に取り入れられた語とされる。
歴史
前近代の宝石誌文献では、黄色い石を指す呼称として「トパーズ」がしばしば用いられ、シトリン(石英の一種)とトパーズ(化学組成の異なる別の鉱物)とが明確に区別されていなかったとされる。このため、「古代エジプトや古代ギリシャでシトリンが用いられた」とする通俗的な言説は、当時の呼称の曖昧さを踏まえると慎重に扱う必要がある。市場に流通する「シトリン」の多くは、アメジスト(アメジスト)を摂氏200〜300度程度で加熱処理して黄色〜橙色に変色させたものであり、天然のシトリンはむしろ稀少である。19世紀のスコットランドでは、シトリンや煙水晶を用いた「ケアンゴーム」と呼ばれる装身具が、ヴィクトリア女王のスコットランド趣味とも結び付いて流行した。
各伝統における意味
現代の宝石魔術・パワーストーン文化
太陽の色を思わせる黄金色から太陽に対応づけられ、自己肯定感・豊かさ・成功をもたらす石とされる。「商人の石(merchant’s stone)」の異名は、商人が金庫にシトリンを入れておくと繁栄が絶えないという伝承に由来するとされる。この意味づけは、古典的なラピダリー文献(アグリッパの対応表等)に明確な典拠を持つものではなく、20世紀以降のパワーストーン文化の中で形成・普及した比較的新しい伝統である。
現代文化
現代の宝飾品としても、手頃な黄色い宝石として広く流通している。
関連ノード
参考文献
- Joan Evans, Magical Jewels of the Middle Ages and the Renaissance, Clarendon Press, 1922. — 中世〜ルネサンス期の宝石誌学における呼称の曖昧さを扱う古典的学術研究
- George Frederick Kunz, The Curious Lore of Precious Stones, J.B. Lippincott Company, 1913. — 近代以前の宝石をめぐる俗信・伝承を収集した古典的資料