概要
パチュリ(学名 Pogostemon cablin)は、東南アジア原産のシソ科植物。ニコラス・カルペパーやハインリヒ・コルネリウス・アグリッパといった古典的な西洋占星術的薬草学の文献には登場しない、西洋にとって比較的新しい植物であり、「魔術ハーブ」としての位置づけは19世紀以降の香料としての受容と、20世紀後半以降の現代魔術文献に由来する。
語源
「パチュリ」の名は、南インドのタミル語 paccai(「緑」)と ilai(「葉」)の合成語に由来するとされる。
歴史
19世紀前半のヨーロッパでは、インドから輸入される高級な織物、とりわけカシミール地方産のショールが、防虫のためパチュリの葉とともに梱包されて運ばれたため、独特の香りを帯びるようになった。1830年代頃までのヨーロッパでは、本場カシミールのショールと、フランス(パリ、リヨン)製の模造品とを、この香りの有無によって見分けることができたと伝えられる。模造品業者がやがて香りの正体を突き止めてパチュリの葉を取り寄せ、模造品に焚き染めるようになって以降、パチュリの香り自体が「本物の東洋の織物」を連想させる香料として西洋の香水文化に定着した。
各伝統における意味
現代の西洋魔術における対応
20世紀後半以降のウィッカ・現代異教主義の実践者コミュニティで流通した魔術ハーブ辞典(スコット・カニンガム『Encyclopedia of Magical Herbs』(1985年)等が代表例とされる)では、パチュリは土星(土星)・地の元素(地)に対応づけられ、金運・豊穣・グラウンディングのための植物として扱われる。ただし、この対応関係の典拠は、学術的な検証を経た文献ではなく実践者コミュニティ内で流通した現代の書籍であり、地中海世界に由来する古典的な占星術的薬草学とは系譜が異なる、20世紀に形成された比較的新しい体系であることに留意が必要である。
現代文化
1960〜70年代のヒッピー文化を象徴する香りの一つとして知られるようになり、現在も香水・アロマの分野で定番のベースノートとして広く使われている。
関連ノード
参考文献
- Scott Cunningham, Cunningham’s Encyclopedia of Magical Herbs, Llewellyn Publications, 1985. — 現代魔術における植物対応の代表的な実践者向け文献
- “Patchouli: What Was Once Old Becomes New Again…and Again,” The Herb Society of America Blog. — カシミールショールとパチュリの香りをめぐる香料史の概説