概要
アブラハムは、『創世記』12〜25章に描かれる族長。ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の3つの一神教すべてで「信仰の父」として位置づけられる、アブラハムの宗教群の共通の祖とされる人物。
語源
ヘブライ語 אַבְרָהָם(アブラハーム)は「多くの民の父」を意味するとされる(創世記17章5節の語源説明)。元の名アブラム(אַבְרָם、「高貴なる父」)から神によって改名されたとされる。
歴史
アブラハムを歴史上実在した単一の人物として同定できる考古学的・同時代史料はなく、族長物語の史実性については聖書学・考古学で議論が続いている。
各伝統における意味
ユダヤ教・キリスト教内部の教説
神からの召命に応じてメソポタミアのウルを離れ、カナンの地への移住を果たしたとされる。神との契約(子孫の繁栄とカナンの地の継承の約束、割礼の制定)を結んだ人物として位置づけられる。老年に神から息子イサク(イサク)を燔祭(生贄)として捧げるよう命じられ、実行直前に神の使いによって止められたという「イサクの燔祭(アケダー)」の逸話(創世記22章)は、信仰と服従を象徴する物語として、後世に大きな神学的意味を持つようになった。
3つの一神教における共通の位置づけ
ユダヤ教・キリスト教ではイサクを通じた系譜が、イスラム教ではもう一人の息子イシュマエルを通じた系譜が重視され、いずれもアブラハムを共通の祖とする点で「アブラハムの宗教」と総称される。
美術
「イサクの燔祭」は西洋美術史上繰り返し描かれた主題の一つ(カラヴァッジョ、レンブラントなど)。個別作品は今後ノード化する。
哲学
キェルケゴールは著書『恐れとおののき』で、イサクの燔祭における「倫理を超越した信仰の飛躍」を哲学的に論じた。
関連ノード
参考文献
- James L. Kugel, The Bible As It Was, Harvard University Press, 1997. — 聖書物語の古代における解釈史を扱う学術研究
- Robert Alter (trans.), Genesis: Translation and Commentary, W.W. Norton, 1996. — 創世記の文学的翻訳・注解の標準的文献
- Søren Kierkegaard, Fear and Trembling, trans. Alastair Hannay, Penguin Classics, 1985(原典1843年). — イサクの燔祭の哲学的読解の古典