概要
エンペドクレス(Ἐμπεδοκλῆς、紀元前5世紀頃)は、古代ギリシャの哲学者・詩人。シチリア島アクラガス出身。火・風・水・地の四元素(四元素)を万物の根源とする説を最初に体系的に唱えたとされる、いわゆる「前ソクラテス期」の自然哲学者の一人。
歴史
著作は断片的にしか現存せず、その思想は後代の哲学者(アリストテレスら)による引用・言及を通じて再構成される部分が大きい。エトナ火山の火口に身を投げて死んだとする伝説が伝わるが、史実としての裏付けは乏しい。
各伝統における意味
四元素説の原型
万物は火・風(空気)・水・地という4つの根源的な「根(リゾーマタ)」から成り、これらが「愛(フィリア)」と「争い(ネイコス)」という2つの対立する原理によって結合・分離を繰り返すことで、世界の生成消滅が説明されるとした。この4つの根の説が、後にアリストテレス(アリストテレス)によって乾湿・寒温の性質と組み合わされ体系化され(四元素を参照)、西洋の自然哲学・医学・錬金術の基礎理論として長く受け継がれることになった。
学術的評価
エンペドクレス自身の思想は、後代に体系化された「四元素説」よりも詩的・宇宙論的な性格が強く、「愛と争い」という2原理を中心とする独自の思想体系として理解する必要がある。四元素という物質観だけを切り出して後代に継承させたのは、主にアリストテレス以降の解釈である点に注意が必要である。
文学
自然哲学的な内容を韻文(詩)の形式で著したことでも知られ、古代における哲学と文学が未分化だった時代を象徴する人物とされる。
関連ノード
参考文献
- G.E.R. Lloyd, Polarity and Analogy: Two Types of Argumentation in Early Greek Thought, Cambridge University Press, 1966. — エンペドクレスの四元素論を含む古代ギリシャ自然哲学の学術研究
- Peter Kingsley, Ancient Philosophy, Mystery, and Magic: Empedocles and Pythagorean Tradition, Clarendon Press, 1995. — エンペドクレス研究の学術的専門文献