概要
ヨセフは、ヤコブ(ヤコブ)とラケルの息子。兄弟たちの嫉妬によりエジプトに奴隷として売られるが、夢解きの能力によりエジプトの宰相にまで昇り詰め、後に一族をエジプトに導く『創世記』後半(37〜50章)の主人公。
語源
ヘブライ語 יוֹסֵף(ヨセフ)は「加える・増す」を意味する語根に由来する(創世記30章24節の語源説明)。
各伝統における意味
ユダヤ教・キリスト教内部の教説
父ヤコブに特別に愛され「色とりどりの長い衣」を与えられたことへの兄弟たちの嫉妬から、井戸に落とされ、隊商に奴隷として売られる。エジプトで宰相ポティファルの家で働くが、その妻の讒言により投獄される。獄中でファラオの側近の夢を解いたことがきっかけで、ファラオ自身の夢(7頭の肥えた牛と7頭の痩せた牛)を解き明かし、7年の豊作と7年の飢饉を予見してエジプトの食糧政策を担う宰相に抜擢される。飢饉の際、食糧を求めて訪れた兄弟たちと再会し、和解を果たす。この物語が、後にヤコブの一族全体がエジプトに移住する契機となり、『出エジプト記』への橋渡しとなる。
学術的読解
聖書学者は、この物語を「賢い異邦人の宮廷での成功物語」という古代近東文学の一類型(知恵文学的物語)として位置づけることがある。
美術
「色とりどりの衣」「ポティファルの妻の誘惑」などの場面は西洋美術で繰り返し描かれた主題。個別作品は今後ノード化する。
文学
トーマス・マンの長編小説『ヨセフとその兄弟』(1933-1943年)が、この物語を近代文学として再構成した代表作として知られる。
関連ノード
参考文献
- James L. Kugel, The Bible As It Was, Harvard University Press, 1997. — 聖書物語の古代における解釈史を扱う学術研究
- Robert Alter (trans.), Genesis: Translation and Commentary, W.W. Norton, 1996. — 創世記の文学的翻訳・注解の標準的文献