概要
パウロ(ヘブライ語名: サウロ、ギリシャ語: Παῦλος)は、新約聖書に登場する初期キリスト教の伝道者。元はキリスト教徒を迫害するユダヤ教ファリサイ派の一員であったが、劇的な回心を経て、非ユダヤ人(異邦人)へのキリスト教伝道の中心的人物となった。
歴史
新約聖書『使徒言行録』によれば、キリスト教徒を迫害する目的でダマスコへ向かう途上、天からの光と復活したイエスの声に出会う体験(ダマスコ体験)を経て回心したとされる。以後、地中海世界を広く旅して伝道し、多くの教会に書簡を送った。新約聖書に収められる27書のうち、7書が学術的にパウロの真筆とほぼ確実視され、残りは真筆性に議論がある。
各伝統における意味
神学的影響
パウロ書簡(特に『ローマの信徒への手紙』)は、信仰による義認、律法とキリスト教の関係など、キリスト教神学の中心的教義の形成に決定的な影響を与えた。イエス自身の直接の教えを記す福音書とは異なる層の文書として、聖書学では区別して扱われる。
歴史的評価
パウロは、ユダヤ教の一分派として始まったイエス運動を、ユダヤ教の律法遵守を前提としない普遍的な宗教として異邦人世界に広げた、キリスト教の世界宗教化における鍵となる人物として歴史学的に位置づけられる。
美術
「ダマスコ途上のパウロの回心」は、カラヴァッジョの作品をはじめ西洋美術で繰り返し描かれた主題。個別作品は今後ノード化する。
文学
パウロ書簡は新約聖書の中で最も早く成立した文書群とされ、初期キリスト教文学の中心を占める。
哲学
パウロの思想は、後のアウグスティヌスやルターなど、西洋神学・哲学史上の多くの思想家に大きな影響を与えた。
関連ノード
参考文献
- E.P. Sanders, Paul: A Very Short Introduction, Oxford University Press, 1991. — パウロ研究の標準的入門書
- Raymond E. Brown, An Introduction to the New Testament, Doubleday, 1997. — パウロ書簡の真筆性議論を含む新約聖書学の標準的概説書