概要
魚は、豊穣・水・霊性を象徴する図像的モチーフ。初期キリスト教における秘密の識別記号「イクトゥス」と、占星術の魚座(魚座)という、由来の異なる複数の伝統に現れる。
語源
ギリシャ語 ἰχθύς(イクトゥス、「魚」の意)は、初期キリスト教において「イエス・キリスト、神の子、救い主」を意味するギリシャ語各単語の頭文字を組み合わせたアクロスティック(折句)としても解釈された。
各伝統における意味
初期キリスト教
ローマ帝国によるキリスト教徒への迫害が続いた時代、信徒同士が互いの信仰を密かに確認し合うための識別記号として、魚の図案(あるいは「イクトゥス」の語)が用いられたとされる伝承が広く知られている。ただし、この用法がどこまで実際の迫害下の慣行を反映しているか、後代にどこまで意味づけが付加されたかについては、学術的に議論の余地がある。魚はまた、福音書に記される奇跡(パンと魚の増殖)や、弟子たちを「人間を捕る漁師」とする記述とも結び付けられる。
西洋占星術
黄道十二宮の魚座(魚座)は、ギリシャ神話でアプロディーテとエロースが魚に変身して逃れた神話に由来するとされ、キリスト教のイクトゥス伝承とは起源の異なる、別系統の魚の象徴である。
ルノルマンカード
ルノルマンカード(ルノルマンカード)では、魚は金銭・事業・豊かさを象徴するカードとして用いられる。
美術
現代でも車のバンパーステッカーなどに図案化された「イクトゥス」がキリスト教徒であることを示す記号として使われ続けている。
関連ノード
参考文献
- J.E. Cirlot, A Dictionary of Symbols, trans. Jack Sage, 2nd ed., Routledge, 1971. — 象徴図像学の標準的参照辞典
- Graydon F. Snyder, Ante Pacem: Archaeological Evidence of Church Life Before Constantine, rev. ed., Mercer University Press, 2003. — 初期キリスト教の図像・記号を扱う考古学的研究