概要
タロット大アルカナの12番。停滞・視点の転換・自己犠牲を表すとされるカード。
図像の変遷
ヴィスコンティ・スフォルツァ版では、貴族風の衣装をまとった人物が両手を後ろで縛られ、片足首だけで横木から吊るされる姿で描かれ、表情は苦悶よりも穏やかさが目立つ。マルセイユ版でもこの「片足吊り」の基本構図は変わらず、素朴な木版表現で背景に木の枝が加えられた。いずれも中世イタリアで裏切り者を片足吊りの姿で描いて晒した「見せしめ絵(pittura infamante)」の系譜を引くとされる。
歴史
初期のイタリアのデッキでは「裏切り者(Il Traditore)」として、片足を吊るされた人物の姿で描かれた。中世イタリアでは実際に裏切り者・破産者を片足吊るしの姿で描いて公衆に晒す慣習(infamying picture)があり、この図像に由来するとする説が有力である。近代のオカルト的解釈(自己犠牲・悟り)は、この当初の懲罰的な意味とは異なる後付けの読みである。
各伝統における意味
ゴールデン・ドーン以降のオカルト的解釈
ヘブライ文字の伝統的分類(『形成の書』の「3母字」)では、吊るされた男の配当パスであるメム(מ)は3つの「母字」の一つで、四元素(四元素)のうち水(水)に配当される。
関連ノード
生命の木から見た整理(任意)
本項は本プロジェクト独自の整理モデルであり、歴史的事実の記述ではない。黄金の夜明け団の対応表では22パスのうちメム(מ)のパス(path-mem)に配当されるとされる。
参考文献
- Michael Dummett, The Game of Tarot: From Ferrara to Salt Lake City, Duckworth, 1980. — タロットが15世紀イタリアのトリックテイキングゲームとして始まったことを実証した基礎的な歴史研究
- Ronald Decker, Thierry Depaulis, Michael Dummett, A Wicked Pack of Cards: The Origins of the Occult Tarot, St. Martin’s Press, 1996. — 18世紀末以降のオカルト的再解釈(クール・ド・ジェブラン、エッティラ、レヴィ、黄金の夜明け団)の経緯を扱う
- Arthur Edward Waite, The Pictorial Key to the Tarot, William Rider & Son, 1910. — ウェイト版タロットの意味づけの一次資料
- Israel Regardie, The Golden Dawn: A Complete Course in Practical Ceremonial Magic, 6th ed., Llewellyn Publications, 1989(初版1937-1940). — 黄金の夜明け団内部の対応表の一次資料