概要
『ファーマ・フラテルニタティス(Fama Fraternitatis, oder Die Bruderschaft des Ordens der Rosenkreutzer、「薔薇十字団同胞団の発見」の意)』は、1614年にドイツのカッセルで匿名出版された小冊子。薔薇十字団(薔薇十字団)の存在を世に告知した最初の文書であり、伝説上の創始者クリスティアン・ローゼンクロイツ(クリスティアン・ローゼンクロイツ)の生涯と同胞団設立の経緯を語る。
語源
「ファーマ(Fama)」はラテン語で「評判・報せ」の意、「フラテルニタティス(Fraternitatis)」は「同胞団の」の意。
歴史
1614年、風刺的な改革論であるトラヤーノ・ボッカリーニの著作のドイツ語翻案『一般改革(Allgemeine und General Reformation)』に併せて出版された。著者は明かされていないが、ルター派神学者ヨハン・ヴァレンティン・アンドレーエを中心とするテュービンゲンのサークルが関与したとする説が有力視されているものの、確定していない。刊行後、ヨーロッパの知識人の間に大きな反響を呼び、多数の応答文書・便乗文書を生み出す一種の思想的事件となった。
各伝統における意味
内容と物語構造
クリスティアン・ローゼンクロイツの若き日の中東遍歴と秘教的知識の獲得、帰国後の秘密同胞団の結成、そして没後120年を経た墓所の発見(象徴的な副葬品と予言的文書を含む)という物語を通じて、失われた古代の叡智が同胞団によって保持されてきたことを主張し、賛同する学者に対して連絡を呼びかける。
研究者の見解
歴史学者フランセス・イエイツは、本書を実体を持つ組織の史実記録としてではなく、宗教改革後の政治的・宗教的緊張の中で、プロテスタント知識人層のヘルメス思想・錬金術への関心を背景に書かれた文学的・思想的宣言文として位置づけている(「薔薇十字の覚醒」論)。この呼びかけに応じて実在の組織が名乗り出た記録は残っていない。
文学
寓話的な物語形式を用いた文書として、後世の薔薇十字系文献に大きな影響を与えた。
関連ノード
- 薔薇十字団 — 本書の刊行によって成立した運動
- 『コンフェッシオ・フラテルニタティス』 — 翌年刊行された続編的文書
- クリスティアン・ローゼンクロイツ — 本書が語る伝説上の創始者
参考文献
- Frances A. Yates, The Rosicrucian Enlightenment, Routledge & Kegan Paul, 1972. — 薔薇十字文書の思想史的背景を扱う古典的研究
- Christopher McIntosh, The Rosicrucians: The History, Mythology, and Rituals of an Esoteric Order, rev. ed., Weiser Books, 1998. — 薔薇十字運動史の一般向け概説