辞典 / 組織

薔薇十字団


視点: 西洋魔術 / ヘルメス思想 / 錬金術 / 宗教 / 歴史
テーマ: 西洋魔術

概要

薔薇十字団(Rosicrucians、独: Rosenkreuzer)は、17世紀初頭のドイツで匿名文書として発表された「薔薇十字文書」群に由来する秘教運動、およびそれを自称する後世の諸団体の総称。実在する単一の組織として創設された記録はなく、文書の発表そのものが運動の起点となった点で特異な事例である。

語源

「薔薇十字(ローゼンクロイツ)」は、創始者とされる伝説上の人物クリスティアン・ローゼンクロイツ(クリスティアン・ローゼンクロイツ、Christian Rosenkreuz)の名に由来するとされるが、この人物の実在は確認されていない。

歴史

1614年から1616年にかけて、『ファーマ・フラテルニタティス』(『ファーマ・フラテルニタティス』)『コンフェッシオ・フラテルニタティス』(『コンフェッシオ・フラテルニタティス』)『クリスティアン・ローゼンクロイツの化学の結婚』という3つの匿名文書がドイツで相次いで出版された。これらの文書は、130年以上前に没した伝説的賢者クリスティアン・ローゼンクロイツが創設した秘密結社の存在を告知し、賛同者に接触を呼びかける内容であった。実際にはこの呼びかけに応じて実体を持つ組織が名乗り出ることはなく、当時のヨーロッパの知識人の間に大きな反響と多数の便乗文書を引き起こした一種の文学的・思想的事件として、現在では理解されている。文書の著者は、ルター派神学者ヨハン・ヴァレンティン・アンドレーエが関与したとする説が有力視されているが、確定していない。

各伝統における意味

薔薇十字文書内部の主張

文書群は、錬金術・ヘルメス思想・キリスト教神秘主義を統合した「一般改革(レフォルマティオ)」と呼ばれる普遍的な知の刷新を予告する内容を含む。

研究者の見解

歴史学者フランセス・イエイツは、薔薇十字文書の背景に、当時のプロテスタント知識人層におけるヘルメス思想・錬金術(錬金術)への強い関心と、宗教改革後の政治的緊張が存在したと分析している(「薔薇十字の覚醒」論)。文書が実体的な組織の存在を証明するものではない、という点は現在の学術的見解として広く共有されている。

近代における自称団体

19世紀末以降、「薔薇十字団」を名乗る複数の秘教結社(黄金の夜明け団(黄金の夜明け団)の儀礼形式にも影響を与えたとされる)や、20世紀のAMORC(薔薇十字友愛会)などが登場したが、これらは17世紀の匿名文書の直接の後継組織ではなく、その名称・象徴を後世に採用した別個の団体である。イギリスの薔薇十字系フリーメイソン団体「ソキエタス・ロザケルシアナ・イン・アングリア(SRIA)」の会員だったケネス・R・H・マッケンジー(ケネス・R・H・マッケンジー)は、後に黄金の夜明け団創設の根拠となる暗号文書の出所として疑われる人物でもあり、薔薇十字系フリーメイソンと黄金の夜明け団とを結ぶ人脈上の結節点の一つとなった。フランスでは、ジョゼファン・ペラダン(ジョゼファン・ペラダン)が薔薇十字の名称・理念を借用した独自の教団を興し、これを母体に象徴主義(象徴主義)絵画を公開する「サロン・ド・ラ・ローズクロワ」を主宰した。

美術

薔薇十字のシンボル(中心に薔薇を配した十字架)は、キリスト教の十字架(受難・救済)と薔薇(薔薇、愛・秘密)を組み合わせた合成図像であり、古代からの薔薇の象徴的用法とは別系統の、近世ヨーロッパにおける独自の再解釈である。

文学

『クリスティアン・ローゼンクロイツの化学の結婚』は、錬金術的象徴を用いた寓意物語の形式を取っており、文学作品としても評価される。

関連ノード

参考文献

関連ノード(発見の質でグループ化)

由来の発見

隣接の発見