概要
ケネス・R・H・マッケンジー(Kenneth R. H. Mackenzie、1833年-1886年)は、イギリスのフリーメイソン研究者・翻訳者・オカルティスト。黄金の夜明け団(黄金の夜明け団)創設の直接の根拠とされた暗号文書「サイファー・マニュスクリプト」の出所を巡り、実際の作成者、あるいは少なくとも中心的な情報源だったのではないかと長らく疑われてきた人物。
歴史
ヴィクトリア朝中期ロンドンの秘教・フリーメイソン・サークルで活動し、大陸の著述家エリファス・レヴィとも交流があったとされる。1877年には浩瀚な参考書『ロイヤル・メイソニック・サイクロペディア(The Royal Masonic Cyclopaedia of History, Rites, Symbolism, and Biography)』を編纂・出版した。イギリスにおける薔薇十字系フリーメイソン団体「ソキエタス・ロザケルシアナ・イン・アングリア(Societas Rosicruciana in Anglia、SRIA)」の会員でもあり、この団体には後に黄金の夜明け団を共同創設するウィリアム・ウィン・ウェストコット(ウィリアム・ウィン・ウェストコット)やウィリアム・ロバート・ウッドマン(ウィリアム・ロバート・ウッドマン)も所属していた。1886年に死去。
各伝統における意味
サイファー・マニュスクリプトとの関わり
マッケンジーの死後2年を経た1888年、ウェストコットが「サイファー・マニュスクリプト」なる暗号文書を入手したと主張し、これを根拠に黄金の夜明け団が創設された。この文書に用いられた暗号体系がマッケンジー自身が生前に公にしていた暗号法と類似していたことから、多くの研究者(R・A・ギルバートなど)は、マッケンジーが文書の原資料の作成者、あるいは少なくとも重要な情報源であった可能性が高いと見ている。ただし当人が団の創設以前に死去しているため、真相を直接確認する術はない。
研究者の見解
歴史学者は、マッケンジーの正確な役割は未解明のままであるとしつつも、黄金の夜明け団の創設神話(サイファー・マニュスクリプトの出所、及びそれを裏付けるとされた「シュプレンゲル嬢」なる人物からの許可状)が、当時のオカルト復興運動によく見られた「古い権威への仮託」の構造を持つ点で、マッケンジーの存在がその背景を理解する上で重要な手がかりになるとしている。
文学
『ロイヤル・メイソニック・サイクロペディア』は、フリーメイソン研究における参照文献として長く利用された。
関連ノード
参考文献
- R.A. Gilbert, The Golden Dawn: Twilight of the Magicians, Aquarian Press, 1983. — 黄金の夜明け団史研究の標準文献。マッケンジーの役割を含む
- Ellic Howe, The Magicians of the Golden Dawn: A Documentary History of a Magical Order 1887–1923, Routledge & Kegan Paul, 1972. — 一次史料に基づく団の文書史研究