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『凱旋』


視点: 文学 / 歴史 / 西洋美術
テーマ: なし

概要

『凱旋』(原題 I Trionfi)は、イタリアの詩人フランチェスコ・ペトラルカ(Francesco Petrarca、1304年-1374年)による寓意詩。愛・貞潔・死・名声・時間・永遠という6つの主題が、それぞれ前の主題を「凱旋(勝利の行進)」の形で打ち負かしていく連作構成を持つ。ペトラルカの死(1374年)の時点で未完成のまま残された。

語源

イタリア語 trionfo(凱旋)は、ラテン語 triumphus(古代ローマにおける戦勝将軍の凱旋式)に由来する。ペトラルカはこの古代ローマの凱旋式のイメージを、抽象的な主題同士が行列を成して次々に勝利していく寓意的枠組みへと転用した。

歴史

1330年代から1370年代にかけて断続的に執筆されたとされ、ダンテ『神曲』と同じ韻律(テルツァ・リーマ)で書かれている。全体は「愛の凱旋」「貞潔の凱旋」「死の凱旋」「名声の凱旋」「時間の凱旋」「永遠(神性)の凱旋」の6部から構成され、愛が人間を打ち負かし、貞潔が愛を打ち負かし、死が貞潔を打ち負かし、名声が死を打ち負かし、時間が名声を打ち負かし、最後に永遠(神)が時間そのものを打ち負かすという階層的な寓意構造を持つ。同時代の先行作品として、ボッカッチョ『アモローサ・ヴィジオーネ』における行列形式の寓意表現からの影響が指摘されている。

各伝統における意味

ルネサンス美術における「トリオンフォ」主題

本作は15世紀以降のイタリア美術において、婚礼調度品(カッソーネ)の装飾画、タペストリー、版画などに繰り返し描かれる「トリオンフォ(凱旋の行列)」という図像主題を広く普及させた。ピエロ・デラ・フランチェスカによる《ウルビーノ公夫妻の肖像》(ウフィツィ美術館)の裏面には、夫妻それぞれの「凱旋」の場面が本作の枠組みに基づいて描かれていることが知られている。

タロットの「トリオンフィ」という呼称との関係

15世紀イタリアの宮廷では、現在タロットの大アルカナと呼ばれる切り札を含むカードゲームが「カルテ・ダ・トリオンフィ(carte da trionfi)」と呼ばれていた(1442年のフェラーラ宮廷の記録などにこの呼称が確認される)。この命名は、本作によって広く知られるようになった「トリオンフィ(勝利の行列)」という当時の文化的モチーフ、および実際にルネサンス宮廷で行われた凱旋パレードの慣習を背景とすると考えられている。タロット史家ガートルード・モークリーは1966年の研究で、ヴィスコンティ=スフォルツァ版タロット(ヴィスコンティ・スフォルツァ版)の大アルカナ22枚の図像・序列が本作の寓意構造を直接のモデルとした可能性を提示したが、この説は22枚と6つの凱旋という数の不一致などを理由に、タロット史研究者の間で異論も多く、確定した学説ではない。

美術

前項の通り、カッソーネ絵画・タペストリー・版画等、ルネサンス期の視覚芸術における主要な図像典拠の一つとなった。

文学

ダンテ『神曲』の韻律・寓意的旅という枠組みを継承しつつ、擬人化された抽象概念同士の勝敗という独自の構成を確立した作品として、後のヨーロッパ寓意文学に影響を与えたとされる。

哲学

愛から永遠(神)へと至る各主題の階層構造は、地上的・肉体的な価値(愛・美・名声)が最終的には時間と神の前に無力であるとする、中世的な世俗批判の枠組みを反映しているとされる。

関連ノード

参考文献

関連ノード(発見の質でグループ化)

隣接の発見