辞典 / 伝統・思想体系

レカノマンシー


視点: 宗教 / 西洋魔術 / 歴史
テーマ: 占術

概要

レカノマンシー(Lecanomancy、盆占い・油占い)は、水を張った鉢(盆)に油などを垂らし、水面に生じる油膜の広がり方・分裂の仕方・気泡の様子といった物理的パターンを吉凶の兆しとして読み解く占術。古代メソポタミアに起源を持つ、記録に残る最古級の占術技法の一つとされる。

語源

ギリシャ語「鉢・盆(レカネー、λεκάνη)」+「占い(マンテイア)」に由来する語。ギリシャ語の術語だが、技法自体の起源はより古い古代メソポタミアにさかのぼる。

歴史

最古の証拠は古バビロニア時代(紀元前2000年頃〜紀元前1600年頃)の粘土板文書に見られ、油を水面に垂らして生じる模様を体系的に解釈するための占い便覧(「油の兆し」文書群)がすでに整備されていた。この占術は宮廷付きの占い師によって、戦争・王位継承・病の予後といった国家的・個人的な重大事の判断に用いられた。ヘレニズム期以降、この技法はエジプト・ギリシャ語圏に伝わり、ギリシャ語魔術パピルス(PGM)やデモティック語魔術パピルスに、幻視や霊的存在を得るための呪文として記録が残る。偽カリステネス『アレクサンドロス物語』に描かれる、エジプト最後の王ネクタネボ2世が青銅の鉢を用いて敵軍を占う場面も、古代エジプトの神殿儀礼がギリシャ人読者向けに「レカノマンシー」として翻案されたものと考えられている。

各伝統における意味

古代メソポタミアの宮廷占術

油と水という、本来混じり合わない2つの液体の相互作用を、神々からの意思表示として読み解く「誘導的(inductive)占術」の代表例。占い師が意図的に兆しを作り出し、その結果を型にはめて解釈する点で、偶然の事象を観察する占術(鳥占いなど)とは性格が異なる。

ヘレニズム期の魔術的展開

ギリシャ語圏に伝わった段階では、単なる吉凶占いを超えて、鉢の水面に幻視(神や霊の姿)を映し出す招霊的な技法としての性格も帯びるようになった。この点で、水晶球や鏡を用いるスクライング(スクライング)と機能的に隣接するが、レカノマンシーが油と水の物理的な反応パターンを「読む」誘導的技法であるのに対し、スクライングは反射・透明な媒体を凝視して幻視を「見る」技法である点で区別される。

現代文化

現代のオカルト実践においてはジオマンシー(ジオマンシー)ほど広くは継承されていないが、同じく「無作為・機械的に生じたパターンを型にはめて解釈する」誘導的占術の古い一例として、占術史の研究では並べて言及されることがある。

関連ノード

参考文献

関連ノード(発見の質でグループ化)

対比の発見

隣接の発見