概要
パラッツォ・スキファノイア(フェラーラ)の「月々の間(サローネ・デイ・メージ)」を飾るフレスコ画連作(1469年-1470年頃)。1年12ヶ月それぞれを、上段(各月を司るとされる古典古代の神々の凱旋)・中段(黄道十二宮のサインと「デカン」と呼ばれる占星術上の神格)・下段(フェラーラ公ボルソ・デステの宮廷生活の場面)という三層構成で描く、西洋美術史上最も占星術そのものを主題とした作例の一つ。フランチェスコ・デル・コッサ(フランチェスコ・デル・コッサ)ら複数の画家による共同制作とされる。
語源
「スキファノイア」はイタリア語で「退屈しのぎ」を意味するとされ、宮廷の遊興・保養のための別邸として建てられたことに由来するという説がある。
歴史
フェラーラ公ボルソ・デステの命により、宮廷内の複数の画家(コッサのほか、エルコレ・デ・ロベルティ、コジモ・トゥーラの工房などとされる)が分担して制作した。現存する12ヶ月分のうち、保存状態が良好なのは3月から9月までの部分に限られ、残りは大きく損傷・消失している。
各伝統における意味
中段:黄道十二宮とデカン
各月の中段には、黄道十二宮(黄道十二宮)のサインと、それを10度ずつ3分割した「デカン(十分度、デカン)」を擬人化した神格(ヘレニズム期エジプトの占星術に由来するとされる)が描かれる。この図像の典拠は長らく不明とされてきたが、20世紀初頭に美術史家アビ・ヴァールブルクが、中世アラビア占星術文献(アブー・マアシャルの著作に遡るとされる)の系譜に連なるものであることを解明したことで知られる。
上段:月を司る古典の神々
各月の上段には、伝統的な占星術上の惑星支配(ルーラーシップ)の体系に基づき、その月を支配する惑星に対応するギリシャ・ローマの神が凱旋する場面が描かれる。
下段:宮廷生活の記録
下段は同時代のフェラーラ宮廷の実際の生活(狩猟、馬上槍試合など)を描いた、当時の宮廷文化を伝える貴重な史料としての側面も持つ。
美術
三層構成という複雑な図像プログラムを持つ大規模フレスコ画連作として、ルネサンス期の占星術的世界観を視覚的に体系化した代表例とされる。
関連ノード
- フランチェスコ・デル・コッサ — 制作者の一人
- 黄道十二宮 — 中段の図像の主題
- デカン — 中段に擬人化されて描かれる占星術上の区分
参考文献
- Aby Warburg, “Italian Art and International Astrology in the Palazzo Schifanoia, Ferrara” (1912), in The Renewal of Pagan Antiquity, trans. David Britt, Getty Research Institute, 1999. — フレスコ画の占星術的図像を解読した基礎的論文
- Nicholas Campion, A History of Western Astrology, Volume II: The Medieval and Modern Worlds, Continuum, 2009. — 中世〜近代の西洋占星術史の標準的学術研究