概要
アルケウス(ラテン語: Archeus)は、パラケルスス(パラケルスス)が提唱した概念で、身体内部に宿り、消化をはじめとする生理的過程を統御するとされる内的な生命力・指導霊を指す。しばしば「内なる錬金術師」と形容され、後にフランドルの医師ヤン・バプティスタ・ファン・ヘルモント(1580年頃-1644年)によってさらに発展させられた。
語源
ラテン語 archeus は、ギリシャ語 ἀρχή(archē、「始まり」「支配的原理」の意)に由来する語形成とされる。
歴史
パラケルススが16世紀に医療理論の中で提示した概念で、体内、特に胃や肝臓に宿るとされる能動的な作用因(「ヴルカヌス(火の神格)」になぞらえられることもある)として、摂取した食物から必要な栄養と不要な毒物を分離する働きを担うと説明された。パラケルススの死後、彼の思想を継承したフランドルの医師ヤン・バプティスタ・ファン・ヘルモント(1580年頃-1644年)は、著作集『医学の起源(Ortus Medicinae)』(1648年、死後刊行)の中でアルケウス概念を大きく発展させ、これを「生命の風(アウラ・ヴィタリス)」と種子的な形(セミナル・イメージ)が結合した、生命現象全体を方向づける指導的原理として体系化した。
各伝統における意味
パラケルスス医学における意味
アルケウスは、食物の中から有用な成分と有害な成分とを選り分ける「内なる錬金術師」として、いわば身体内部で日々営まれる分離・浄化の作業(マクロコスモスの錬金術の作業を身体というミクロコスモスの中で行う存在)に例えられた。病気は、このアルケウスの働きが外部からの毒物・異物によって攪乱された結果として説明された。
ファン・ヘルモントによる発展
ファン・ヘルモントは、パラケルススの硫黄・水銀・塩の三原質(三原質)を物質の先在原理とする立場を退けつつも、アルケウスについては、生命体の各部位・各器官にそれぞれ固有のアルケウス(下位アルケウス)が宿り、これらを統括する中枢的なアルケウス(アルケウス・インフルス)が存在するという、より精緻な階層的モデルへと発展させた。治療の目標は、外部から病を直接攻撃することではなく、乱されたアルケウス自身がみずから正常な働きを取り戻せるよう助けることに置かれた。
関連ノード
参考文献
- Allen G. Debus, The Chemical Philosophy: Paracelsian Science and Medicine in the Sixteenth and Seventeenth Centuries, Science History Publications, 1977. — アルケウス概念とそのファン・ヘルモントによる発展を扱う標準的学術研究
- Andrew Weeks, Paracelsus: Speculative Theory and the Crisis of the Early Reformation, State University of New York Press, 1997. — パラケルスス思想研究の標準的学術文献
- Georgiana D. Hedesan, An Alchemical Quest for Universal Knowledge: The ‘Christian Philosophy’ of Jan Baptist Van Helmont (1579-1644), Routledge, 2016. — ファン・ヘルモントのアルケウス論を扱う近年の学術研究