概要
アストロラーベ(astrolabe)は、天球上の星・惑星の位置を平面に投影する幾何学的な図法(平射図法)を応用し、時刻の計算、天体の位置の割り出し、占星術上のホロスコープ作成などを行うための携帯用天文計算器。古代ギリシャに起源を持ち、中世イスラム世界で大きく発展した後、ラテン語圏の中世ヨーロッパへと伝わった。
語源
ギリシャ語「星(アストロン)を捉えるもの(ラベイン、「捉える」に由来)」を意味する語に由来する。
歴史
平射図法(球面を平面に投影する数学的技法)を用いた天文観測器具の原型は、紀元前2世紀のギリシャの天文学者ヒッパルコスに帰されることが多く、2世紀のプトレマイオス(プトレマイオス)は著書『プラニスファエリウム』の中でこの図法を理論的に論じている。8世紀以降のイスラム世界では、アストロラーベは天文学・占星術だけでなく、礼拝時刻やメッカの方角の算出といった実用目的にも用いられ、多様な改良型が考案された。11世紀頃、イベリア半島(アル=アンダルス)を経由してこの器具と関連するアラビア語文献がラテン語に翻訳され、中世ヨーロッパに伝わった。後に教皇シルウェステル2世となるジェルベール・ドーリヤックはその普及に貢献した人物の一人とされる。
各伝統における意味
実用的な天文計算器としての機能
裏面の目盛りと表面の回転する星座盤(レーテ)を組み合わせることで、任意の日時における天体の高度・位置を機械的に読み取ることができる。時刻測定、緯度の割り出し、航海における位置測定など、天文学・占星術・航海術にまたがる多目的な道具として使われた。
占星術における用途
星座盤には黄道十二宮(黄道十二宮)の目盛りが刻まれており、出生時刻における惑星の位置(ホロスコープ)を手作業で算出するための計算補助具としても用いられた。天文学と占星術が明確に分離していなかった時代を象徴する道具の一つである。
現代文化
現存する精巧な中世イスラムの真鍮製アストロラーベは、博物館の科学史コレクションにおいて、イスラム科学の到達水準を示す代表的な展示品として扱われている。
関連ノード
参考文献
- J.D. North, Cosmos: An Illustrated History of Astronomy and Cosmology, University of Chicago Press, 2008. — アストロラーベを含む西洋天文学史の標準的概説書
- David A. King, Astrolabes and Angels, Epigrams and Enigmas: From Regiomontanus’ Acrostic for Cardinal Bessarion to Piero della Francesca’s Flagellation of Christ, Franz Steiner Verlag, 2007. — イスラム世界におけるアストロラーベ発展を扱う専門的学術研究