概要
四福音書記者とは、新約聖書に収められた4つの福音書(イエス・キリストの生涯を伝える文書)の著者とされるマタイ・マルコ・ルカ・ヨハネの4人を指す。キリスト教美術では、それぞれが人(天使)・獅子・牡牛・鷲という4つの生き物の姿で象徴的に表される図像伝統(テトラモルフ)が広く用いられた。
語源
「エヴァンゲリスト(福音書記者)」はギリシャ語 εὐαγγελιστής(「良い知らせを告げる者」)に由来する。
歴史
4つの生き物の組み合わせは、旧約聖書エゼキエル書1章の幻視(人・獅子・牡牛・鷲の顔を持つ生き物)と、新約聖書ヨハネの黙示録4章7節の記述に由来するとされる。2世紀の教父エイレナイオスが、この4つの生き物を4福音書と結び付けて解釈した最初期の例として知られ、以後キリスト教図像学の伝統として定着した。各福音書記者への生き物の割り当て(マタイ=人/天使、マルコ=獅子、ルカ=牡牛、ヨハネ=鷲)は、エイレナイオス以降にほぼ定着したが、初期には異なる割り当て説(例えばヒッポリュトスの説)も存在した。
各伝統における意味
キリスト教美術(テトラモルフ)
中世の写本装飾(特に福音書写本の巻頭挿絵)、教会のステンドグラス・彫刻で、4つの生き物を組み合わせた図像(テトラモルフ)が繰り返し用いられた。各生き物は、伝統的にそれぞれの福音書の内容的特徴(マタイの人間性への注目=人、マルコの荒野からの始まり=獅子、ルカの犠牲への注目=牡牛、ヨハネの高遠な神学=鷲)と結び付けて解釈されることが多いが、これは後代の象徴的読解であり、福音書記者自身が意図したものではない。
近代西洋秘教における再解釈
四福音書記者の4つの生き物は、四元素(四元素)と対応づけて解釈されることもある。これはキリスト教図像学とは別系統の、近代オカルティズムによる再利用である。
美術
タロットの「世界」(世界)カードの図像で、この4つの生き物が画面の四隅に配置される構図が広く採用されている。
関連ノード
参考文献
- George Ferguson, Signs & Symbols in Christian Art, Oxford University Press, 1954. — キリスト教図像学の標準的参照辞典
- Raymond E. Brown, An Introduction to the New Testament, Doubleday, 1997. — 四福音書の成立史を扱う標準的概説書