辞典 / 概念

七惑星の印章


視点: 西洋魔術 / 歴史
テーマ: 西洋魔術 / 西洋占星術

概要

「七惑星の印章」とは、単一の特定作品の題名ではなく、近世ヨーロッパで作られた一群の匿名写本に繰り返し用いられた表題・内容類型を指す便宜的な呼称である。月・水星・金星・太陽・火星・木星・土星という伝統的7惑星それぞれに対応する印章(シジル)の図案と、それを用いて護符(タリスマン)を作成するための具体的な手順(材料・時期・儀礼作法)を記す実践的な手引書という点で共通するが、現存する諸写本は互いに独立して書写・編纂されたものであり、単一の「原典」に遡ることができるという史料的裏付けは確認できない。

歴史

この類型に属する写本として、現在までに複数の実例が古書市場・図書館コレクションを通じて知られている。年代の判明するものでは、16世紀末頃のドイツ語圏で作られたとされる小冊子写本(現代の古書目録では「Alchemy: Seals of the Seven Planets」の名で扱われる、全9葉)があり、ギリシャ文字・ヘブライ文字を組み合わせた星辰印章の図案とともに、護符作成の儀礼手順・材料(金属・香料など)を記す。また1660年頃イタリアで作成されたとされる写本(近年のオークション市場では「Seals of the Seven Planets / Metallorum Sigillum」の名で紹介され、末尾にガスペロ・フォスターなる人物による所蔵記録が残る)も、同様に7惑星それぞれの印章と護符作成法を記した実践的な手引きとして紹介されている。さらに、18世紀のライプツィヒで書写された写本(ライプツィヒ大学図書館所蔵、Cod.mag.38、1750年)は『ソロモン王の七惑星印章の書(Regis Salomonis Septem Sigilla Planetarum)』というラテン語題を持ち、19世紀にはこの系統の写本の一つがヨハン・ショイブレの著作集『自然魔術と反自然魔術(Magia naturalis et innaturalis)』(シュトゥットガルト、1849年)にも取り込まれている。これらの写本は、成立地・成立年代・言語(ドイツ語・イタリア語・ラテン語)がいずれも異なり、内容の細部(呼び出す精霊の名称や印章の図案)にも相違があることから、単一の作品の写しというより、共通の主題・題名の型を独立に踏襲した複数の作品群として扱うのが適切である。

各伝統における意味

内容とソロモン系文献との関係

これらの写本に共通する内容は、占星術的な印章図案とタリスマン作成の実践手順であり、マルシリオ・フィチーノの『生について(De Vita)』における天体照応の理論や、ハインリヒ・コルネリウス・アグリッパ『隠秘哲学(De Occulta Philosophia)』の惑星対応表、さらには『ソロモンの鍵』(『ソロモンの鍵』)に代表されるソロモン系文献(ソロモンの魔術)の護符図案の伝統を踏まえている。ライプツィヒ写本の表題が示すように、この種の写本の一部は、他の多くのグリモワール(グリモワール)と同様にソロモン王への仮託によって権威づけられているが、実際の成立年代はいずれも近世であり、ソロモン王本人とは無関係である。

研究上の留意点

「七惑星の印章」という括りは、内容・機能が類似した実践的手引き文書に研究者・古書業者が便宜的に与えている類型名であって、特定の著者・原典を持つ一つの確立した「作品」を指す語ではない。この点で、本項は『ソロモンの鍵』のような比較的系統立った写本伝承を持つ文献とは性格が異なり、同名・類似名の複数の独立した写本が近世ヨーロッパ各地に散在するという状況を反映した「ジャンル」として理解するのが、現時点で確認できる史料の範囲内では最も慎重な扱いである。

関連ノード

参考文献

関連ノード(発見の質でグループ化)

隣接の発見