概要
グリモワール(フランス語: grimoire)は、中世〜近世ヨーロッパで作られた魔術の実践手引書の総称。天使・悪魔・精霊を呼び出す儀式の具体的手順、護符の作り方、魔法円の描き方などが記される。
語源
フランス語 grimoire は、難解な文書を意味した古フランス語 gramaire(「文法」)に由来するとされる。英語 grammar と同根。
歴史
中世盛期から近世にかけて、写本の形で作成・書写・流布した。多くは著者不詳、あるいは著名な人物(ソロモン王(ソロモン王)、教皇レオ3世、大アルベルトゥス(大アルベルトゥス)など)に仮託される形で権威づけられたが、実際の成立年代・著者は仮託される人物とは無関係であることが史料研究で明らかにされている。印刷術の普及後も、教会・世俗権力による取り締まりの対象となったため、多くは写本のまま非公式に流通し続けた。
各伝統における意味
実践内容
天使・悪魔・精霊を呼び出す(召喚・喚起、召喚・喚起)ための具体的な儀式手順、実践者を霊的存在から守る魔法円(魔法円)の描き方、護符の図案などが記される。多くはキリスト教的な枠組みの中で、天使や聖なる名を用いて霊的存在を制御しようとする実践だった。
研究者の見解
歴史学者は、グリモワールを「古代からの秘伝の記録」とする文書内部の自己主張ではなく、中世〜近世という特定の時代の宗教的・知的環境の中で成立した文化的産物として位置づける。代表的なグリモワールの一つに『ソロモンの鍵』(『ソロモンの鍵』)がある。
文学
グリモワールは実践的な手引書であると同時に、しばしば寓意的・象徴的な文学的要素も含む。
現代文化
現代のファンタジー作品における「魔道書」のイメージの源流の一つとされる。
関連ノード
- 西洋儀式魔術 — 上位の伝統
- 魔法円 — グリモワールに記される中心的な実践
- 召喚・喚起 — グリモワールに記される中心的な技法
- 『ソロモンの鍵』 — 代表的なグリモワール
- ソロモン王 — 仮託される代表的な人物
- マンドレイク — グリモワールに言及される人型の根を持つ植物
- 大アルベルトゥス — 仮託される代表的な人物
- アルス・ゴエティア — 代表的なグリモワールの一つ
- ジオマンシー — アグリッパの著作を通じて体系化された占術技法
参考文献
- Owen Davies, Grimoires: A History of Magic Books, Oxford University Press, 2009. — 中世〜近世の魔術書伝統の標準的学術研究