概要
ベリアルは、旧約聖書に「無価値・邪悪」を意味する語として登場し、後代のユダヤ教・キリスト教文献で悪魔的存在として人格化された名。
語源
ヘブライ語 בְּלִיַּעַל(ベリヤアル)は「無・無価値(בְּלִי)」+「価値(יַעַל)」の合成語で、原義は抽象名詞(「無価値・邪悪」)であり、固有の悪魔名ではなかったとされる。
歴史
旧約聖書では「ベリアルの子ら(無頼の輩)」のように、悪しき人間を形容する慣用句として用いられる。死海文書(クムラン文書)に至り、光の子らと闇の子らの終末的な戦いにおいて、闇の勢力を率いる人格化された悪の権化として明確に登場するようになった。新約聖書コリントの信徒への手紙二6章15節でも、キリストと対置される悪の権化として言及される。
各伝統における意味
旧約聖書における抽象名詞としての用法
固有の人格を持たない、道徳的な悪・無価値を表す慣用的表現として用いられる。
死海文書・新約聖書における人格化
クムラン共同体の終末論的世界観の中で、サタン(サタン)と並ぶ、あるいは同一視される悪の指導者として人格化された。
中世〜近世の悪魔学
『アルス・ゴエティア』(アルス・ゴエティア)をはじめとするグリモワール文献に、悪魔の一柱として記載される。
文学
ジョン・ミルトン『失楽園』(『失楽園』)で、堕天使の一柱として描かれる。
関連ノード
参考文献
- Gustav Davidson, A Dictionary of Angels, Including the Fallen Angels, Free Press, 1967. — 個々の悪魔の典拠を整理した参照文献
- James H. Charlesworth (ed.), The Dead Sea Scrolls, Baylor University Press, 2006. — 死海文書における終末論的悪魔観を扱う学術的資料集