辞典 / 神格

フォルトゥナ


視点: 神話 / 宗教 / 文学 / 西洋美術
テーマ: 図像学

概要

フォルトゥナ(Fortuna)は、運命・幸運・偶然を司るローマ神話の女神。ギリシャ神話のテュケー(Tyche)と同一視されることが多い。目隠しをして、あるいは球や輪の上に立つ姿でしばしば表され、その気まぐれさ・予測不可能さが人間の地位・財産の絶え間ない浮沈と結び付けられた。

エドワード・バーン=ジョーンズ『運命の輪』(1875年-1883年、オルセー美術館)
エドワード・バーン=ジョーンズ『運命の輪』(1875年-1883年、オルセー美術館)。Public domain, via Wikimedia Commons

語源

ラテン語 fortuna(「運、幸運」)に由来し、英語 fortune の語源でもある。

歴史

ローマにおけるフォルトゥナ崇拝は共和政期から帝政期にかけて広く行われ、各地に神殿が建てられた。単なる幸運の擬人化にとどまらず、都市国家ローマ自体の命運を司る存在としても崇敬された。

各伝統における意味

ローマ宗教における崇拝対象

軍事的勝利・個人の幸運・都市の繁栄など、多様な文脈で祈願の対象とされた。属性として、豊穣を表す角杯(コルヌコピア)や、舵(航海の比喩としての運命の操舵)を持つ姿でも描かれる。

中世ヨーロッパの文学的表象

ボエティウス『哲学の慰め』(『哲学の慰め』)第2巻では、擬人化されたフォルトゥナが輪を回し続ける存在として登場し、人間の地位・財産の絶え間ない浮沈を説く。この記述は、中世ヨーロッパに広く流布した「運命の輪(ロタ・フォルトゥナエ)」の図像伝統(輪(車輪))の形成に特に大きな影響を与えたとされ、以後のヨーロッパ文学・図像美術で繰り返し参照される定番のモチーフとなった。

美術

輪を回すフォルトゥナと、輪の頂点から転落していく人物という構図が、中世の写本挿絵・大聖堂の彫刻・ステンドグラスなどに広く見られる。

文学

ボエティウス『哲学の慰め』のほか、中世〜ルネサンス期の多くの文学作品で「気まぐれな運命の女神」というモチーフが繰り返し用いられた。

哲学

ボエティウスは『哲学の慰め』の中で、フォルトゥナの気まぐれさそのものを彼女の「本質」と位置づけ、移ろいやすい外的な地位・財産に一喜一憂せず、内面の徳に幸福の基盤を置くべきだと説く哲学的議論を展開した。

現代文化

タロットの大アルカナ「運命の輪」(運命の輪)の図像は、この中世フォルトゥナ伝統を直接の起源とする。

関連ノード

参考文献

関連ノード(発見の質でグループ化)

隣接の発見