概要
モイライ(古代ギリシャ語: Μοῖραι、「割り当て・運命」の意)は、ギリシャ神話における運命を司る三姉妹の女神。クロト(紡ぐ者)が人の命の糸を紡ぎ、ラケシス(割り当てる者)がその長さを定め、アトロポス(背けぬ者)が糸を断ち切って死をもたらすとされる。
語源
Μοῖρα は「割り当てられた分・運命」を意味するギリシャ語の普通名詞に由来する。
歴史
ヘシオドス『神統記』(『神統記』)では、正義の女神テミスとゼウスの娘とされる系譜が示される一方、より古い異伝では原初の夜の女神ニュクスの娘とする系譜もあり、成立時期の異なる複数の系譜が並立する。
各伝統における意味
神々すら逆らえない法
ギリシャ神話において、モイライが定める運命は、主神ゼウスを含む神々でさえも根本的には覆すことができない、宇宙の根源的な法として扱われる点が特徴的である。これは、個々の神々の意志を超えた、より深い秩序の存在を示唆するものとして哲学的にも論じられてきた。
糸を紡ぐ図像
紡錘・糸巻き・鋏を持つ3人の老女(あるいは3世代の女性)として描かれる図像伝統は、後の西洋美術・文学における「運命の糸」のモチーフの起源となった。この糸を紡ぐという行為は、運命の輪(輪(車輪))とはまた異なる、運命を視覚化する系統のモチーフである。
哲学
ギリシャ悲劇における「逃れられない運命」というテーマの多くは、直接名指しされない場合も含め、モイライが体現する運命観を背景に持つ。
関連ノード
参考文献
- Hesiod, Theogony, trans. M.L. West, Oxford University Press, 1988(原著紀元前700年頃). — モイライの系譜を伝える一次資料
- Walter Burkert, Greek Religion, trans. John Raffan, Harvard University Press, 1985. — ギリシャ宗教研究の標準的学術文献