概要
『神統記』(Θεογονία、Theogonia)は、古代ギリシャの詩人ヘシオドス(紀元前8世紀頃)による叙事詩。カオスからの世界の始まりからオリュンポスの神々の支配確立に至るまでの神々の系譜を体系的に記述した作品で、ギリシャ神話の神統譜を伝える最古級かつ最も重要な文献とされる。
語源
ギリシャ語 θεογονία(テオゴニア)は「神々(テオイ)」+「誕生・生成(ゴニア)」の合成語。
歴史
ホメロスの叙事詩とほぼ同時代(紀元前8世紀頃)に成立したとされるが、ホメロスが英雄叙事詩であるのに対し、本作は神々の系譜そのものを主題とする点で性格が異なる。
各伝統における意味
神統譜の体系化
カオス、ガイア(大地)、ウラノス(天)、クロノス(クロノス)、ゼウスに至る世代交代の神話、アプロディーテ(アプロディーテ)の誕生譚、ヘカテー(ヘカテー)への言及、夜の女神ニュクス(ニュクス)の子である眠りの神ヒュプノス(ヒュプノス)とその双子タナトス(タナトス)への言及、運命を司るモイライ(モイライ)や復讐の女神エリニュス(エリニュス)・学芸の女神ムーサ(ムーサ)の誕生譚など、後世に伝わるギリシャ神話の神統譜の骨格の多くが、本作によって初めて文献上体系的に記述された。
異伝との関係
本作の記述と、後代のオウィディウス『変身物語』(『変身物語』)など他の文献に伝わる異伝との間には、しばしば相違が見られる。ギリシャ神話には単一の「正典」が存在せず、複数の文献が並立する伝承である点に注意が必要である。
美術
アプロディーテの誕生譚は、サンドロ・ボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』(『ヴィーナスの誕生』)をはじめ、後世の西洋美術に繰り返し取り上げられた。
文学
古代ギリシャ文学における叙事詩の伝統の中で、ホメロスと並ぶ最古級の重要作品として位置づけられる。
関連ノード
- クロノス — 神統譜の中心的な神格の一柱
- アプロディーテ — 誕生譚が記される女神
- ヘカテー — 肯定的な性格で描かれる女神
- ガイア — 神統譜の起点となる始原神
- ウラノス — 去勢神話で描かれる始原神
- ヒュプノス — 系譜が記される眠りの神
- ニュクス — 系譜の要となる原初の夜の女神
- タナトス — 系譜が記される死の神
- モイライ — 系譜が記される運命の女神
- エリニュス(復讐の女神) — 誕生譚が記される復讐の女神
- ムーサ(学芸の女神) — 詩人が霊感を授かる場面が記される学芸の女神
参考文献
- Hesiod, Theogony, trans. M.L. West, Oxford University Press, 1988(原典 紀元前8世紀頃). — 標準的な英訳版
- Timothy Gantz, Early Greek Myth: A Guide to Literary and Artistic Sources, Johns Hopkins University Press, 1993. — ギリシャ神話の異伝を古典文献に即して整理した標準的資料集