概要
『ヴィーナスの誕生』(Nascita di Venere、1485年頃)は、サンドロ・ボッティチェリ(サンドロ・ボッティチェリ)によるテンペラ画。貝殻に乗って海から誕生した女神ウェヌス(アプロディーテ、アプロディーテ)が岸へと運ばれる場面を描く。『プリマヴェーラ』(『プリマヴェーラ』)と並ぶボッティチェリの代表作であり、しばしば対となる作品として論じられる。
歴史
『プリマヴェーラ』と同様、フィレンツェのメディチ家(ロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコ・デ・メディチ)のために制作されたとする説が有力だが、確実な史料的裏付けは限定的である。中世以降のイタリア絵画において、等身大に近い裸体の異教の女神を主題とした作品としては最初期の例の一つとされる。
各伝統における意味
図像の典拠
ヘシオドス『神統記』に記される、天空神ウラノスの切断された性器が海に落ち、その泡(アプロス)から成人した姿のアプロディーテが生まれたという神話(詳細はアプロディーテを参照)を典拠とする。古代の彫刻「メディチのヴィーナス」型の立像のポーズを踏襲しているとされる。
新プラトン主義的解釈
『プリマヴェーラ』と同様、20世紀の美術史家(アビ・ヴァールブルク、エルヴィン・パノフスキーら)は、本作をマルシリオ・フィチーノの新プラトン主義(新プラトン主義)哲学(肉体的な愛を超えた「天上の美」の顕現としてのウェヌス)を視覚化した作品として解釈した。これは20世紀の美術史研究による一つの読解であり、制作当時の受容のされ方を直接示す史料的裏付けは限定的である点に注意が必要である。
美術
貝殻の上に立つ裸体のウェヌスを中央に、左に風神ゼピュロスとニンフのクロリス、右にホーラ(季節の女神)が布を差し出す構図で描かれる。
現代文化
西洋美術史上最も広く複製・言及される作品の一つとして、現代のポピュラーカルチャーでも頻繁に引用される。
関連ノード
- サンドロ・ボッティチェリ — 制作者
- アプロディーテ — 描かれる女神
- 新プラトン主義 — 20世紀の美術史研究が見出した解釈の枠組み
参考文献
- Ernst Gombrich, “Botticelli’s Mythologies: A Study in the Neoplatonic Symbolism of His Circle,” Journal of the Warburg and Courtauld Institutes, vol. 8 (1945), pp. 7–60. — 新プラトン主義的解釈を確立した古典的論文
- Ronald Lightbown, Sandro Botticelli: Life and Work, Abbeville Press, 1989. — ボッティチェリ研究の標準的モノグラフ