概要
クロノス(古代ギリシャ語: Κρόνος)はギリシャ神話におけるティーターン神族の主神で、ゼウス(ゼウス)の父。ローマ神話の農耕神サートゥルヌス(Saturnus、英語 Saturn=土星の由来)と同一視される。時間を意味するギリシャ語クロノス(χρόνος)とは綴りが異なる別語源だが、両者はしばしば混同・同一視されてきた。
語源
Κρόνος の語源には諸説あり、確定した定説はない。時間の神クロノス(Χρόνος)との音の類似から、後代に両者が同一視される潮流が生じたが、これは民間語源による混同であり、本来別個の存在である。
歴史
ヘシオドス『神統記』(『神統記』)に伝わる神統譜において、クロノスは天空神ウラノス(ウラノス)と大地母神ガイア(ガイア)の子で、父ウラノスを鎌(大鎌)で去勢し支配権を奪ったとされる。この際に滴った血から復讐の女神エリニュス(エリニュス(復讐の女神))が生まれたという異伝も伝わる。この神話は、古代近東(ヒッタイト神話のクマルビ神話など)に類似の「父神殺し・世代交代」の型を持つ神話が存在することから、比較神話学の文脈でしばしば議論される。
各伝統における意味
ギリシャ神話
自らの子に王位を奪われるという予言を恐れ、生まれた子を次々に飲み込んだが、末子ゼウスだけは母レアーの機転で難を逃れ、後に成長してクロノスを打倒し、オリュンポスの神々の時代を開いたとされる。子を飲み込む場面は、フランシスコ・デ・ゴヤの『我が子を食らうサトゥルヌス』(『我が子を食らうサトゥルヌス』)の主題としても知られる。クロノスが統治した時代は「黄金時代」(労苦のない理想郷)として理想化されて語られることが多い。
ローマ神話サートゥルヌスとの同一視
ローマ神話の農耕神サートゥルヌスと同一視され、この名がそのまま英語の惑星名 Saturn(土星)の由来となった。ローマの祝祭「サトゥルナーリア」(後のクリスマスの一部の習俗の起源とも言われる)はサートゥルヌス信仰に由来する。
美術
鎌(大鎌)を持つ姿で描かれることが多い。
関連ノード
- 土星 — 名前の由来となった惑星(ローマ神話サートゥルヌス経由)
- ゼウス — 子
- アストライア — クロノスが統治した黄金時代に人間界に留まったとされる女神
- 『我が子を食らうサトゥルヌス』(ゴヤ版) — 子を飲み込む場面を描くゴヤの絵画
- レイア — 妻
- 『神統記』 — 神統譜を伝える一次資料
- ガイア — 母
- ウラノス — 去勢し支配権を奪った父
- 大鎌 — 持物として描かれる図像モチーフ
- 『我が子を食らうサトゥルヌス』(ルーベンス版) — 子を飲み込む場面を描くルーベンスの絵画
- エリニュス(復讐の女神) — ウラノス去勢の際に滴った血から生まれたとされる女神
参考文献
- Walter Burkert, Greek Religion, trans. John Raffan, Harvard University Press, 1985. — ギリシャ宗教研究の標準的学術文献
- Timothy Gantz, Early Greek Myth: A Guide to Literary and Artistic Sources, Johns Hopkins University Press, 1993. — 各神話の異伝を古典文献に即して整理した標準的資料集
- Hesiod, Theogony, trans. M.L. West, Oxford University Press, 1988(原著紀元前700年頃). — クロノスの神統譜を伝える一次資料