概要
『我が子を食らうサトゥルヌス』(Saturno devorando a un hijo、1819年-1823年頃)は、フランシスコ・デ・ゴヤ(フランシスコ・デ・ゴヤ)による「黒い絵」連作の一つ。子が生まれると次々に食い殺したというサトゥルヌス(ローマ神話における農耕神で、ギリシャ神話のクロノス(クロノス)と同一視される)の神話を主題とする。
歴史
「聾者の家」の食堂の壁に直接描かれた壁画の一つで、後にキャンバスに移された。同じ主題は17世紀のペーテル・パウル・ルーベンスも描いており(1636年頃、『我が子を食らうサトゥルヌス』(ルーベンス版))、両者はしばしば比較の対象とされるが、ゴヤの表現ははるかに生々しく暴力的である点で対照的とされる。
各伝統における意味
神話上の典拠
自らの子に王位を奪われるという予言を恐れ、生まれた子を次々に飲み込んだというクロノス(サトゥルヌス)の神話(詳細はクロノスを参照)を主題とする。
研究者の見解
この作品の解釈については、老いと時間(サトゥルヌス=土星は伝統的に「時間」を司る星とされる、土星を参照)による破壊の寓意、当時のスペインの政治的混乱の暗喩、ゴヤ自身の心理状態の反映など、複数の説が提示されてきたが、単一の確定的な解釈が学術的に定まっているわけではない。
美術
激しい筆致と暗い色調で、子を貪り食う巨大なサトゥルヌスの姿を生々しく描く。ルーベンス版と比較して、より原始的・非人間的な恐怖を表現しているとされる。
心理学
現代では、この作品を精神分析的な観点(親による子への抑圧・支配の寓意など)から論じる潮流もあるが、これは20世紀以降の後代の解釈であり、ゴヤ自身が意図した意味とは区別する必要がある。
関連ノード
- フランシスコ・デ・ゴヤ — 制作者
- クロノス — 描かれる神
- 土星 — サトゥルヌスの名の由来となった惑星
- 『我が子を食らうサトゥルヌス』(ルーベンス版) — 同主題を描いた約2世紀前の別作品
参考文献
- Robert Hughes, Goya, Alfred A. Knopf, 2003. — ゴヤ研究の標準的な伝記・批評的研究