概要
ヒュプノス(古代ギリシャ語: Ὕπνος、「眠り」の意)は、ギリシャ神話における眠りを司る神。夜の女神ニュクス(ニュクス)の子で、死の神タナトス(タナトス)と双子の兄弟とされる。夢の神モルペウス(モルペウス)をはじめとする複数の夢の神々(オネイロイ)の父ともされる。
語源
Ὕπνος は「眠り」を意味するギリシャ語の普通名詞でもあり、英語 hypnosis(催眠)・hypnotic(催眠術の)の語源となった。
歴史
ヘシオドス『神統記』(『神統記』)にすでに登場する、比較的古い層の神話的存在で、原初の神々の系譜に位置づけられる。タナトスと双子とされる点は、眠りと死が古代ギリシャ人にとって近しい観念として捉えられていたことを示すとされる。
各伝統における意味
ギリシャ神話における位置づけ
ホメロス『イリアス』では、ゼウスの妻ヘラの依頼を受けてゼウスを眠らせる役割で登場するなど、しばしば神々の意思決定に介入する存在として描かれる。人間だけでなく神々にも作用する力を持つ点が特徴とされる。
夢の神々(オネイロイ)の父
ヒュプノスは、夢を人間に送り届ける複数の神々(オネイロイ)の父ともされ、その一柱がモルペウス(人間の姿を模して夢に現れる神)である。この系譜は、オウィディウス『変身物語』において特に詳しく語られる。
関連ノード
参考文献
- Hesiod, Theogony, trans. M.L. West, Oxford University Press, 1988(原著紀元前700年頃). — ヒュプノスの系譜を伝える一次資料
- Timothy Gantz, Early Greek Myth: A Guide to Literary and Artistic Sources, Johns Hopkins University Press, 1993. — 各神話の異伝を古典文献に即して整理した標準的資料集