概要
バベルの塔は、『創世記』11章に記される物語。単一言語を話していた人類が天に届く塔を築こうとしたため、神が人々の言語を混乱させて意思疎通を不可能にし、地上に散らしたとされる。
語源
「バベル」はヘブライ語で「混乱させる」を意味する動詞 בָּלַל(バラル)と関連づける聖書内部の語源説明(創世記11章9節)があるが、これは民間語源であり、実際には古代メソポタミアの都市バビロン(Bab-ili、「神の門」の意)の名に由来するとする説が言語学的には有力である。
歴史
古代メソポタミアには、都市の中心に築かれた聖塔(ジッグラト)が広く存在し、特にバビロンの巨大なジッグラト(エテメンアンキ)が物語の背景にあるとする説が有力視される。物語の成立は、バビロン捕囚(紀元前6世紀)前後のユダヤ人がバビロニアの壮大な建築物を目の当たりにした経験を反映しているとする学術的見解がある。
各伝統における意味
ユダヤ教・キリスト教内部の教説
人間の傲慢(天に届こうとする野心)に対する神の裁きの物語として、伝統的に読まれてきた。同時に、世界に多様な言語・民族が存在することの起源神話としても機能する。
学術的読解
歴史学者・聖書学者は、この物語をバビロンの実在の巨大建築物への驚きと、それに対する古代イスラエルの神学的解釈が結びついた文学作品として位置づける。単一言語から多言語への「分化」を扱う物語という点で、世界各地の神話に見られる「言語の起源神話」の一類型としても比較研究の対象となる。
美術
ピーテル・ブリューゲル(父)による『バベルの塔』(1563年頃)が特に著名で、後世のこの主題の視覚的イメージを決定づけた。個別作品は今後ノード化する。
現代文化
「バベル」という語は、現代でも「収拾のつかない混乱・多言語状態」を指す比喩として広く用いられる。
関連ノード
参考文献
- James L. Kugel, The Bible As It Was, Harvard University Press, 1997. — 聖書物語の古代における解釈史を扱う学術研究
- John H. Walton, Genesis, NIV Application Commentary, Zondervan, 2001. — 古代近東文化との比較を含む創世記の学術的注解