概要
タロット大アルカナの16番。突発的な崩壊・啓示・既存の枠組みの破壊を表すとされるカード。
図像の変遷
前述の通りヴィスコンティ・スフォルツァ版に本カードは現存せず、比較できるのはマルセイユ版とライダー・ウェイト・スミス版以降となる。マルセイユ版では、石造りの塔の頂上から王冠が稲妻に吹き飛ばされ、二人の人物が頭から転落する構図とともに「La Maison Dieu(神の家)」という名称が定着した。この語は当時、貧者や病人を収容する施療院を指す語でもあった。稲妻に打たれ人物が落下する基本構図はウェイト版以降にもほぼそのまま引き継がれている。
歴史
初期のイタリアのデッキでは「稲妻に撃たれる塔」「地獄」など複数の呼称・図像が伝わり、名称・図像とも他のカードに比べて成立過程の異同が大きいとされる。旧約聖書の「バベルの塔」(バベルの塔)との図像的な連想がしばしば指摘されるが、直接の典拠関係は確立していない。
各伝統における意味
ゴールデン・ドーン以降のオカルト的解釈
ヘブライ文字の伝統的分類では、塔の配当パスであるペー(פ)は「複字」に属し、伝統的7惑星のうち火星(火星)に配当される。闘争・破壊という火星の性質が、塔の崩壊というイメージと結び付けられたとされる。生命の木の第5セフィラ「ゲブラー」も火星に配当されるが(ゲブラー)、これはセフィラ↔惑星の別系統の対応表であり、ペーのパス↔火星の対応とは出典を異にする。
美術
稲妻に撃たれ、人物が塔から落下する図像がライダー・ウェイト版以降定着している。
関連ノード
- path-peh — 生命の木における配当パス
- 火星 — ヘブライ文字の伝統的分類における配当惑星
- バベルの塔 — 図像的な連想がしばしば指摘される旧約聖書の物語
- 塔 — 傲慢と崩壊を象徴する図像モチーフ
生命の木から見た整理(任意)
本項は本プロジェクト独自の整理モデルであり、歴史的事実の記述ではない。黄金の夜明け団の対応表では22パスのうちペー(פ)のパス(path-peh)に配当されるとされる。
参考文献
- Michael Dummett, The Game of Tarot: From Ferrara to Salt Lake City, Duckworth, 1980. — タロットが15世紀イタリアのトリックテイキングゲームとして始まったことを実証した基礎的な歴史研究
- Ronald Decker, Thierry Depaulis, Michael Dummett, A Wicked Pack of Cards: The Origins of the Occult Tarot, St. Martin’s Press, 1996. — 18世紀末以降のオカルト的再解釈(クール・ド・ジェブラン、エッティラ、レヴィ、黄金の夜明け団)の経緯を扱う
- Arthur Edward Waite, The Pictorial Key to the Tarot, William Rider & Son, 1910. — ウェイト版タロットの意味づけの一次資料
- Israel Regardie, The Golden Dawn: A Complete Course in Practical Ceremonial Magic, 6th ed., Llewellyn Publications, 1989(初版1937-1940). — 黄金の夜明け団内部の対応表の一次資料