概要
タロット大アルカナの15番。束縛・欲望・物質への執着を表すとされるカード。
図像の変遷
前述の通りヴィスコンティ・スフォルツァ版に本カードは現存しないため、比較できるのはマルセイユ版とライダー・ウェイト・スミス版以降となる。マルセイユ版の悪魔は、角状の飾りとコウモリのような翼を持ち、腹部にもう一つの顔を配し、鳥の爪のような足で台座に立ち、両脇に鎖でつながれた小悪魔を従える姿で描かれる。この図像はウェイト版にもおおむね継承されたが、19世紀のオカルティスト、エリファス・レヴィが考案した山羊頭の「バフォメット」像の影響を受け、後世の解釈には山羊の角や五芒星といった要素が加わっていった。
歴史
初期のイタリアのデッキから存在するが、現存する最古級のデッキ(ヴィスコンティ=スフォルツァ版、ヴィスコンティ・スフォルツァ版)には本カードが欠けており、図像の初期の姿には不明な点が多い。
各伝統における意味
キリスト教美術との関係
角・翼・獣脚を持つ悪魔の図像は、中世キリスト教美術における悪魔表現の伝統を引き継ぐ。
ゴールデン・ドーン以降のオカルト的解釈
ヘブライ文字の伝統的分類では、悪魔の配当パスであるアイン(ע)は「単字」に属し、黄道十二宮のうち山羊座(山羊座)に配当される。山羊の姿を持つ悪魔(バフォメット的図像、バフォメット)と山羊座への配当は図像上も符合する。山羊座自体の起源であるギリシャ神話の牧神パーン(山羊座ノードを参照)も、後世キリスト教美術における悪魔の図像(角・獣脚)に影響を与えたとする説がある。
関連ノード
- path-ayin — 生命の木における配当パス
- 山羊座 — ヘブライ文字の伝統的分類における配当サイン、および図像上のモチーフの重なり
- バフォメット — 山羊の姿を持つ図像上の連想先
- ヴィスコンティ・スフォルツァ版 — 本カードが現存せず欠けているデッキ
生命の木から見た整理(任意)
本項は本プロジェクト独自の整理モデルであり、歴史的事実の記述ではない。黄金の夜明け団の対応表では22パスのうちアイン(ע)のパス(path-ayin)に配当されるとされる。
参考文献
- Michael Dummett, The Game of Tarot: From Ferrara to Salt Lake City, Duckworth, 1980. — タロットが15世紀イタリアのトリックテイキングゲームとして始まったことを実証した基礎的な歴史研究
- Ronald Decker, Thierry Depaulis, Michael Dummett, A Wicked Pack of Cards: The Origins of the Occult Tarot, St. Martin’s Press, 1996. — 18世紀末以降のオカルト的再解釈(クール・ド・ジェブラン、エッティラ、レヴィ、黄金の夜明け団)の経緯を扱う
- Arthur Edward Waite, The Pictorial Key to the Tarot, William Rider & Son, 1910. — ウェイト版タロットの意味づけの一次資料
- Israel Regardie, The Golden Dawn: A Complete Course in Practical Ceremonial Magic, 6th ed., Llewellyn Publications, 1989(初版1937-1940). — 黄金の夜明け団内部の対応表の一次資料