概要
タロット大アルカナの4番。権威・秩序・構造を表すとされるカード。
図像の変遷
ヴィスコンティ・スフォルツァ版の皇帝は、白髭の高齢の人物が笏を手にする、装飾を抑えた質素な姿で描かれる。マルセイユ版になると、髭を蓄えた壮年の人物が横向きに玉座へ腰掛け、脚を組んで玉付きの笏を持つという、より定型化された図像に整えられた。ライダー・ウェイト版でウェイトとスミスは、玉座に牡羊の頭部の意匠を加えて黄金の夜明け団の対応表にある牡羊座を明示し、笏をエジプトのアンク(生命の鍵)の形に変えるなど、占星術的な意味づけを新たに図像へ組み込んだ。
歴史
初期のイタリアのデッキから、皇后(La Imperatrice)と対をなす世俗権力の図像として存在した。
各伝統における意味
初期のタロット
皇帝・皇后のペアは、法王・女教皇のペアと並んで「この世の権威」と「霊的権威」を表す組として構成されていたとする説がある。
ゴールデン・ドーン以降のオカルト的解釈
黄金の夜明け団の対応表では牡羊座(牡羊座)と、生命の木のヘー(ה)のパス(path-heh)に配当される。
アレイスター・クロウリー(アレイスター・クロウリー)は、自身の『法の書』(Liber AL vel Legis、『法の書』)の一節(「ツァディは星ではない」)の解釈に基づき、黄金の夜明け団本流とは異なる配当を採用した。トート・タロット(トート・タロット)では「皇帝」をツァディ(צ)のパスに、代わって「星」をヘー(ה)のパスに配当する(本流とは逆の組み合わせ)。これは「唯一の正しい対応表」が存在するわけではなく、複数の対応体系が並立していることを示す事例として扱う。
美術
玉座に座る髭の人物として描かれるのが典型的図像。牡羊の意匠が施されることがある。
関連ノード
- 牡羊座 — ゴールデン・ドーンの対応表における配当先
- path-heh — 黄金の夜明け団本流における配当パス(クロウリー系ではツァディのパス)
- path-tzaddi — クロウリー系の対応表における配当パス
- アレイスター・クロウリー — 独自の配当を行った人物
- 『法の書』 — 独自配当の根拠とされる一節を含む文書
- トート・タロット — 独自の配当を採用したデッキ
生命の木から見た整理(任意)
本項は本プロジェクト独自の整理モデルであり、歴史的事実の記述ではない。黄金の夜明け団本流ではヘー(ה)のパス(path-heh)、クロウリーのトート・タロットではツァディ(צ)のパスとされる(両体系の相違は上記「各伝統における意味」を参照)。
参考文献
- Michael Dummett, The Game of Tarot: From Ferrara to Salt Lake City, Duckworth, 1980. — タロットが15世紀イタリアのトリックテイキングゲームとして始まったことを実証した基礎的な歴史研究
- Ronald Decker, Thierry Depaulis, Michael Dummett, A Wicked Pack of Cards: The Origins of the Occult Tarot, St. Martin’s Press, 1996. — 18世紀末以降のオカルト的再解釈(クール・ド・ジェブラン、エッティラ、レヴィ、黄金の夜明け団)の経緯を扱う
- Arthur Edward Waite, The Pictorial Key to the Tarot, William Rider & Son, 1910. — ウェイト版タロットの意味づけの一次資料
- Israel Regardie, The Golden Dawn: A Complete Course in Practical Ceremonial Magic, 6th ed., Llewellyn Publications, 1989(初版1937-1940). — 黄金の夜明け団内部の対応表の一次資料
- Aleister Crowley, The Book of Thoth, Ordo Templi Orientis, 1944. — クロウリー(トート・タロット)独自の配当の一次資料