概要
トート・タロットは、アレイスター・クロウリー(アレイスター・クロウリー)が理論・対応表を主導し、画家フリーダ・ハリス(フリーダ・ハリス)が図版を制作した20世紀のタロットデッキ。黄金の夜明け団本流の対応表を踏まえつつ、クロウリー独自の解釈による配当の変更を複数含む。
語源
「トート(Thoth)」は古代エジプトの知恵・書記の神の名。アントワーヌ・クール・ド・ジェブラン(アントワーヌ・クール・ド・ジェブラン)が18世紀に唱えた「タロットは古代エジプトの叡智の書『トートの書』の断片である」とする説(歴史的には否定されている)を意識的に踏まえた命名であり、クロウリー自身がこの説を史実として主張したわけではない。
歴史
1938年から1943年にかけて、クロウリーの詳細な指示のもとハリスが図版を制作した。1944年、クロウリーは理論的解説書『トートの書(The Book of Thoth)』を刊行したが、この時点ではカードそのものは一般に販売されておらず、原画は後にウォーバーグ研究所(ロンドン大学)に収蔵された。カードデッキとして広く一般に流通するようになったのは、両者の死後、1960年代末以降のことである。
各伝統における意味
黄金の夜明け団本流からの独自展開
クロウリーは黄金の夜明け団本流の対応表を踏まえつつ、一部で異なる配当を採用した。代表例として、「皇帝」(皇帝)と「星」(星)に対応するヘブライ文字のパス(ヘー(ה)のパス path-heh、ツァディ(צ)のパス path-tzaddi)を本流とは入れ替えて配当した。クロウリーはこれを自身の『法の書』の一節(「ツァディは星ではない」)の解釈に基づく変更と説明している。「唯一の正しい対応表」が存在するわけではなく、複数の対応体系が並立していることを示す代表的事例である。
美術
伝統的なタロット図像の様式から大きく離れ、キュビスムや神聖幾何学の図式を取り入れた抽象度の高い図像を特徴とする。デッキの理論的枠組みはクロウリーが主導した一方、実際の絵画的表現・美術的解釈はハリスの手によるものであり、両者の共同作業の産物として位置づけるのが適切である。
現代文化
ライダー・ウェイト版と並び、現在も広く流通する主要なタロットデッキの一つであり続けている。
関連ノード
- アレイスター・クロウリー — 理論・対応表を主導した人物
- フリーダ・ハリス — 図版を制作した画家
- 皇帝 — 独自の配当を行ったカード
- 星 — 独自の配当を行ったカード
- path-heh — 独自の配当を行ったパス
- path-tzaddi — 独自の配当を行ったパス
- アントワーヌ・クール・ド・ジェブラン — 「トート」という命名の背景にあるエジプト起源説の提唱者
生命の木から見た整理(任意)
本項は本プロジェクト独自の整理モデルであり、歴史的事実の記述ではない。黄金の夜明け団本流とクロウリー系の対応表の相違については、皇帝・星・path-heh・path-tzaddiの各ノードを参照。
参考文献
- Aleister Crowley, The Book of Thoth, Ordo Templi Orientis, 1944. — クロウリー自身によるトート・タロットの理論的解説書(一次資料)
- Tobias Churton, Aleister Crowley: The Biography, Watkins Publishing, 2011. — クロウリーとハリスの共同制作の経緯を含む伝記研究
- Ronald Decker, Thierry Depaulis, Michael Dummett, A Wicked Pack of Cards: The Origins of the Occult Tarot, St. Martin’s Press, 1996. — 20世紀のオカルト・タロット史の中での位置づけを扱う