概要
タロット大アルカナの18番。不安・幻惑・無意識を表すとされるカード。天体としての月、および占星術上の惑星としての月とは別のカードである点に注意(惑星の月とはassociated_withの関係にとどまる。詳細は下記)。
図像の変遷
ヴィスコンティ・スフォルツァ版では、狩猟の女神ディアナが三日月を掲げる図像で、後の犬やザリガニはまだ現れない。マルセイユ版になると、二匹の犬(または犬と狼)が月に向かって吠え、水面からザリガニが現れ、背景に二つの塔が立つという構図が確立し、月は横顔で描かれるようになった。ライダー・ウェイト版はこの構図をほぼ踏襲しつつ、したたる雫をヘブライ文字ヨッドに置き換えるなど、オカルト的な再解釈を加えている。
歴史
初期のイタリアのデッキから、月を見上げる二人の占星術師あるいは犬(犬)の図像として存在した。
各伝統における意味
ゴールデン・ドーン以降のオカルト的解釈
ヘブライ文字の伝統的分類では、月(タロットカード)の配当パスであるコフ(ק)は「単字」に属し、黄道十二宮のうち魚座(魚座)に配当される。これは天体としての月が伝統的7惑星の一つとして生命の木の第9セフィラ「イエソド」に配当される対応(イエソド)とは別系統の対応表である。同じ「月」という名を持つカードと天体が、生命の木上では異なる場所(パスとセフィラ)に配当される点は、対応表を読む上で混同しやすい典型例である。
美術
犬(犬)と狼、あるいは2頭の犬が月に向かって吠える図像、ザリガニが水中から現れる図像がライダー・ウェイト版で定着している。
関連ノード
生命の木から見た整理(任意)
本項は本プロジェクト独自の整理モデルであり、歴史的事実の記述ではない。黄金の夜明け団の対応表では22パスのうちコフ(ק)のパス(path-qoph)に配当されるとされる。
参考文献
- Michael Dummett, The Game of Tarot: From Ferrara to Salt Lake City, Duckworth, 1980. — タロットが15世紀イタリアのトリックテイキングゲームとして始まったことを実証した基礎的な歴史研究
- Ronald Decker, Thierry Depaulis, Michael Dummett, A Wicked Pack of Cards: The Origins of the Occult Tarot, St. Martin’s Press, 1996. — 18世紀末以降のオカルト的再解釈(クール・ド・ジェブラン、エッティラ、レヴィ、黄金の夜明け団)の経緯を扱う
- Arthur Edward Waite, The Pictorial Key to the Tarot, William Rider & Son, 1910. — ウェイト版タロットの意味づけの一次資料
- Israel Regardie, The Golden Dawn: A Complete Course in Practical Ceremonial Magic, 6th ed., Llewellyn Publications, 1989(初版1937-1940). — 黄金の夜明け団内部の対応表の一次資料