概要
『詩篇』は、旧約聖書に収められる150編の詩・歌からなる文書。賛美・嘆願・感謝・哀歌など多様な形式の詩を含み、ユダヤ教・キリスト教双方の礼拝・祈祷の伝統において最も広く用いられてきた文書の一つ。
語源
ヘブライ語原題 תְּהִלִּים(テヒリーム、「賛美」の意)。「詩篇(Psalms)」はギリシャ語 ψαλμός(プサルモス、「弦楽器に合わせて歌う歌」の意)に由来する。
歴史
伝統的にダビデ王(ダビデ王)が多くの詩篇の著者とされるが、詩篇集全体は複数の著者・時代にわたって編纂されたコレクションであることが、現代の聖書学では広く認められている。成立年代は、最も古い層で王国時代、最も新しい層で捕囚後期にまで及ぶとされる。
各伝統における意味
ユダヤ教における位置づけ
シナゴーグでの礼拝・祈祷において中心的な役割を果たし、今日でも広く朗誦される。
キリスト教における位置づけ
修道院の日課の祈祷(聖務日課)の中心に据えられ、また新約聖書でイエスの受難の予型として引用される詩篇(詩篇22篇など)は、キリスト論的に重要視される。
清めの象徴としての言及
詩篇51篇7節「ヒソプ(ヒソプ)をもって我が罪を除きたまえ」は、悔悛の詩篇の代表として広く知られ、出エジプト記の清めの儀式のイメージを比喩的に転用した表現である。
文学
西洋文学史における詩的表現の源流の一つとして、比喩・並行法(パラレリズム)などのヘブライ詩の技法が広く影響を与えた。
関連ノード
参考文献
- Robert Alter (trans.), The Book of Psalms: A Translation with Commentary, W.W. Norton, 2007. — 詩篇の文学的翻訳・注解の標準的文献
- James L. Kugel, The Bible As It Was, Harvard University Press, 1997. — 聖書物語の古代における解釈史を扱う学術研究